野球善哉BACK NUMBER
菊池雄星「僕らが続かないと失礼」
筒香の勇気ある発言を孤立させるな。
posted2019/02/14 10:50
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
AFLO
シーズンインに向けたキャンプ情報がメディアを騒がせているのを見ていて、こうして2019年も野球漬けになっていくのだろうなと思った。
それは楽しみでもあり、危惧でもある。
キャンプイン前のシーズンオフは、野球教室や講演会などが全国各地で開催されていた。現役のプロ野球選手はもちろんのこと、プロ野球OBなどが一般市民の前に登場。「シーズンオフの風物詩」とも言えるのだが、最近よく話題にあがるのが、「野球人口減少」など球界の危機を叫ぶ声だ。
野球界にも将来への危機感が生まれつつある一方、シーズンが始まってしまうと、そうした意識が薄れてしまうだろうという危惧があるのだ。
早稲田大学野球部OBが主催する野球教室で、ある現役のプロ選手がこんな話をしていた。
「選手がもっと取り組むべきことはあると思いますけど、少年の野球人口が減少しているという現実は感じづらいし、シーズン中に選手間で話すことはあまりない」
彼らの言葉は、プロ野球界の現状を指すものであろう。
メディアだって他人ごとではない。
シーズンオフこそ、野球人口減少だ、脱勝利至上主義だ、球数制限だと紙面を賑わせるが、シーズンが始まるとその勢いはピタリと止む。
筒香がひとり矢面に立っている。
そう言った現状にあって、野球界の問題に積極的に発言しているプロ野球選手がDeNAの主砲・筒香嘉智だ。
彼の出身チームである堺ビッグボーイズ小学部の「チーム・アグレシーボ」の体験会前後に行われる会見は毎年恒例になっている。
同チームのスーパーバイザーを務めている筒香は、その場で野球界の窮状を訴えてきた。怒号・罵声の練習環境、勝利至上主義に満ちた選手起用やトーナメント制の問題などである。さらに今年は1月25日に外国特派員協会で記者会見を開いて、世界に向けても発信した。
見事な姿勢であり、行動力だと思う。
しかし、シーズンが始まってしまうと、そうした筒香の行動力は、勝敗の一喜一憂にまぎれて忘れられるというのが事実だろう。