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アジア杯に長谷部誠がいたら……
という想像と、世代交代の難しさ。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/02/06 17:30
アジア杯準優勝はもちろん悔しさが残る。ただ世代交代を進める森保ジャパンにあって、この敗戦は大きな経験とも言える。
監督と選手のクッション役。
もしも長谷部がいたとしても負傷などでピッチに立てなかったと仮定する。だが長谷部ならベンチにいても、何かしらの声を発しただろうし、監督と話し合うこともしたはずだ。
実際「長谷部は唯一無二の主将」と話す選手も多い。それは単に精神的なまとまりだけでなく、チームを勝利に導くために、監督と選手の間に入って話すこともできる主将だったということ。そんな場面は、ロシアW杯でも多く見られた。
今回の決勝戦後、表彰式では乾貴士と森保監督が話し合う、即席反省会も行われていた。乾は「気づいていたから、もっと早く言っていれば」と後悔のコメントも残している。
もしかしたら差し出がましいかも、という気持ちを選手が抱くのもわからないではない。だからこそ、長谷部がいたらうまくクッションになって、数分早くベンチからピッチに指令が下っていたかもしれない。
誰もがリーダーとなれる集団に。
本田圭佑がいてもまた違ったかもしれない。テレビ番組で槙野智章が「W杯では西野さんではなく本田君が指示を出していた」と話し、それに岡崎慎司がSNSで反論するなど、物議をかもしたことがあった。
その是非はともかく、何か声を出して意見を言う選手が必要だったように思う。
しかし、長谷部はもう代表を引退してしまった選手だ。こんなことを言っていても始まらない。代表を去った長谷部はフランクフルトで実に生き生きとプレーしており、今後また調子を上げていくはずだ。
とはいえ、彼は代表には戻らないだろうし、また今後長谷部と全く同じ選手が生まれるということもあり得ない。ピッチ内で選手自身が判断しながら対応できる、その際のリーダーシップを誰もが取れる、そんなチームに少しずつなっていくしかないのだ。