スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
FA契約といぶし銀二塁手の苦境。
大型契約の陰で起こっていること。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byAFLO
posted2019/02/02 11:00
ロイヤルズと契約を延長したウィット・メリフィールド二塁手。長期契約は吉と出るか凶と出るか。
かつて同レベルの選手の年俸は高かった。
値切られたなあ、というのが私の第一印象だ。この4人は、それぞれがオールスター出場もしくはゴールドグラヴ獲得を果たしている。大スターではないかもしれないが、長期にわたっていぶし銀のような活躍を見せてきた。
にもかかわらず、どの球団も、申し合わせたように条件を絞り込んでいる。
まず、年俸は1200万ドルを超えない。しかも、このなかで二塁の定位置が保証されているのは、マーフィとドジャーだけだ。ヤンキースには大谷翔平と新人王を争ったグレイバー・トーレスがいるので、レメイヒューはたぶん控えに回される(トーレスが遊撃手にコンヴァートされれば話は別だが)。ラウリーの場合も、ロビンソン・カノーという大物が席を譲らないだろう。
ただ、レメイヒューもラウリーも、いろいろな守備位置をこなせる。内野はどこでも守れるし、場合によっては外野の守備に就くことも厭わないだろう。万能といえば万能、便利屋といえば便利屋的な存在だが、ちょっと気の毒な感じもする。
かつては彼らと同レベル、あるいは少し下と考えられる選手が、(貨幣価値の変動を考慮すると)もっと優遇されていた。ルイス・カスティーヨ('07年、32歳の年にメッツとFA契約)は、4年総額2475万ドルを得ていたし、オマール・インファンテ('13年、32歳の年にロイヤルズとFA契約)も、4年総額3000万ドルの長期契約に漕ぎ着けていたではないか。
メリフィールドの契約内容。
こうした例を見ると、ロイヤルズが、ウィット・メリフィールド二塁手(30歳になったばかり)との契約を延長したケースも、同じ潮流に属する現象のように思える。
2018年シーズン、メリフィールドは大リーグ最多の192安打を放ち、大リーグ最多の45盗塁を記録した。遅咲きで、印象も地味だが、一部では高く評価されている選手だ。
その彼が、2020年に年俸調停の権利を得る。'23年にはFA資格も得る。現在の年俸は約57万ドルと低いが、調停にかけられれば、10倍前後の金額が射程圏内に入ってくる。
そこでロイヤルズは先手を打った。メリフィールドのほうも、FA資格を得るときはすでに34歳になっていることを計算に入れたにちがいない。