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「野球男子」の減少は本当に問題か。
北海道の教室で出会った2人の女子。 

text by

安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byHideki Sugiyama

posted2019/01/31 07:00

「野球男子」の減少は本当に問題か。北海道の教室で出会った2人の女子。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

野球を選ぶ子供たちの数は減り続けている。野球にとっての適正なサイズ、形を探すのはこれからだ。

実は「野球女子候補生」は多いのでは。

 フッと思ったことがある。

 15~6人のスクールに、野球がこんなに好きで上手な女の子が2人参加している…ということは、この近隣に1000人の小学生、中学生がいれば、その中に120~130人の「野球女子候補生」が埋もれていてもおかしくないのでは……。

 実際に、去年までのスクールにも「女子」は参加していた。

 皆、卒業してしまったが、スクールにいた頃は足手まといどころか、ともすれば“力任せ方向”に走ろうとする男子たちのお手本になるような合理的な身のこなしを無意識に発揮しながら、立派に「野球」と取り組んでいた。

「野球男子」が減ってきている。それは、高校野球でも中学軟式でも、もう何年も前から叫ばれてきている。

 確かに、統計は間違いなくそうした傾向を示してはいるのだが、だから「たいへんだ!」という空気はどうだろう。

選択肢が野球しかないのが変だった。

 自分のまわりから人が減っていく様子は間違いなく人を不安にさせ、漠然とした危機感を抱かせる。しかし、もうちょっと「引いた見方」をしてみたら、昔は野球男子がたくさんいすぎた、多すぎたのではないか。そんな「仮説」も立てられるのではないか。

 確かに私が子供の頃は、男子の遊びといえば「野球」。野球せぬ者、男子にあらず……みたいな空気すらあった。

 そんな流れの結果にあったのが、長く続いた「男子野球隆盛」の時代だろう。

 しかし考えたら、みんながみんな同じことをするほうが不自然ではないか。ネコもシャクシも野球、野球。そういう片寄った現実のほうがおかしかったのだと考えるのが、健全な気がしている。

 今のようにスポーツ競技が数多く紹介され、用具が開発され、その認知の幅が広がってくれば、野球人口が減って、そのぶんサッカーでもバスケットでも、野球以外のスポーツ少年たちが増えるのは当たり前の現象であろう。

 数人か、場合によっては1人なんてこともある手薄な指導陣が、抱え込めないほどの部員を抱えて、そのことである種の満足感や安心感を覚え、しかし実際はとてもひとりひとりを指導しきれないから、どうしても全体に“蛮声”で指示を与えることになり、伝わりきらないいら立ちが罵声になり、恫喝になり…そんな現場はなかったろうか。

 目の届く範囲の人数であれば、人間、そんなに声を張り上げずに済むものだ。

【次ページ】 野球女子候補生、どれほどいるのだろう。

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