ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
イランは最強だがトルシエは楽観。
「日本にはまだまだ余力がある」
posted2019/01/28 11:30
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Takuya Sugiyama
フィリップ・トルシエは今、ハノイを離れ一時的にヨーロッパに戻っている。日本対ベトナム戦がおこなわれた1月24日を彼はサラエボで迎えたのだった。
イビチャ・オシムに会いに行ったわけではない。オシムがサラエボではなくグラーツに移動していることはトルシエも承知していた。ではいったい何のために……?
本人は理由を明かさないが、試合の翌日、電話で連絡がとれないトルシエからメールでメッセージが届いた。日本が辛勝でベスト4に進出したベトナム戦を彼はどう見たのか。トルシエの論評をここに掲載する。
なお、次のイラン戦は電話インタビューを再開する予定である。
ベトナムは重圧と無縁だった。
日本対ベトナム戦は、どちらも準決勝進出に強い野心を抱いているチーム同士の対戦だった。日本は5度目のアジアカップ優勝へのひとつのステップとして。ベトナムはアジアカップ本大会で2度目のベスト8進出(最初は自国を含む東南アジアの4カ国共同開催となった2007年大会)を果たし、さらなる躍進を遂げるために。
ベトナムはグエン・クアンハイ(19番)を中心にした若い世代が恐れを知らず、朴恒緒監督は3バックをベースにした堅固なディフェンスを築いてゴールを固める実戦的なチームを構築した。
守備的な布陣と戦い方に地元ベトナムメディアは批判的だが私はそうは思わない。対戦相手との力関係を考えたときに、このやり方が最も効果的であるからだ。
クアンハイやグエン・コンフオン(10番)らの仕掛けるカウンターアタックには威力があり、実際に数々のサプライズを作り出してきた。ベトナムが相手に恐れられるようになったのも、攻撃がここまで威力を発揮したからだった。
日本戦でもそれは変わらなかった。プレッシャーとは無縁のベトナムは、日本を相手にしても怯むことなく持てる力を存分に発揮した。
幾度となくチャンスを作り出したが、得点に至らなかったのは日本の守備を完全には崩し切れなかったことと、ゴール前での冷静さを欠いていたからだった。小国が大国に挑む際に見られる、典型的なパターンであるといえる。