プレミアリーグの時間BACK NUMBER
愛弟子イグアインに賭けたサッリ。
チェルシーの緊急補強は吉か凶か。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2019/01/26 10:00
ミラン在籍は半年間にも満たなかったイグアインだが、決定力は今もなおワールドクラス。恩師のもとで逆襲なるか。
選手の発言力が大きい。
監督の荒療治がチームにポジティブな反応を起こすことはある。だが、サッリの現任地はチェルシーだ。近年にはジョゼ・モウリーニョとアントニオ・コンテが、選手との関係に亀裂が生じた末に職を追われた。
3年前のモウリーニョ2期目は「チームに裏切られた」と発言した敗戦後の会見が、指揮官として最後の仕事となった。コンテ前監督も、当時の主砲ジエゴ・コスタに携帯メールで「構想外」を告げた行動が、チーム内不協和音の始まりだった。
ロシア人富豪のワンマン経営で知られるチェルシーだが、オーナーの一声に次ぐ影響力を持つのが、選手たちの不満の声。俗に言う「プレーヤー・パワー」が強いのだ。
解説者のガリー・ネビルはサッリの発言を「どうせ、あと1年半かそこらで切られる運命なのだから」としているが、裏目に出るリスクは覚悟の上ということだ。
指揮官は表面上こそ「心配などしていない」と言っている。
アーセナル戦の4日後、トッテナムとのリーグカップ準決勝第2レグ前の会見で、選手の心離れや謀反の可能性を問われた際の返答だ。しかし、サッリ体制下での最大の武器であるアザールが、士気の低下とともにに調子を落とす不安がつきまとう。
アザールはリーダーではない?
チェルシーがトップ4戦線に踏み止まっているのは、第23節終了時点でチーム最多の10ゴール10アシストを記録しているアザールの個人能力によるところが大きい。リーグカップでのベスト4入りにしても、ボーンマスとの前ラウンドで、温存されるはずだったアザールの途中出場による決勝ゴールを必要とした。
アザールには、モウリーニョ体制下では守備面での要求に辟易とし、コンテ体制下ではCF起用を不服とした過去がある。
「偽9番」役を任せる試合が増えたサッリも、現体制下でも不満を漏らすのではないかと会見で尋ねられると、「足で語ってくれればいい」と苦笑するにとどまっている。
また周囲にメンタル改善を促すリーダー格としてサッリが名前を挙げた選手の中に、在籍7年目のアザールは含まれていなかった。
サッリが挙げたのはセサル・アスピリクエタとダビド・ルイスの両DF。前者は実際にキャプテンを任されており、「コンテの下で愚痴っていないのはアスピリクエタだけ」とも言われたように、そもそも監督に礼を尽くすタイプでもある。
ダビド・ルイスは1度目にチェルシー入りした8年前当時からリーダー向きと言われてきた。ただしいずれも、取り立ててサッリに忠実というわけではない。