プレミアリーグの時間BACK NUMBER
愛弟子イグアインに賭けたサッリ。
チェルシーの緊急補強は吉か凶か。
posted2019/01/26 10:00
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
1月23日午後に成立した、ゴンサロ・イグアインのチェルシー移籍。ユベントスから今季末までのレンタルを成立させた西ロンドンの雄にとっては、待望の新センターフォワード(CF)獲得だ。
特に「マウリツィオ・サッリのチェルシー」にとっては。
'18年夏に就任したサッリの下、ポゼッション重視の攻撃的スタイルを習得中のチームは、ボールを支配しても得点に苦労する試合が目立ってきた。迎えられたイグアインは、2015-16シーズンにセリエAの最多得点記録を更新したフィニッシャーだ。
同シーズンに在籍していたナポリの監督はサッリである。チェルシーで1年目の壁にぶつかる中でショック療法に打って出たが、両者は「世界最高のストライカー」、「師事を仰いだなかで過去最高の監督」とお互いを認め合う関係で、頼もしい味方と言える。
サッリが危険な賭けに出たのは、4位で迎えた1月19日のプレミアリーグ第23節アーセナル戦のことだった。
0-2で敗れ、アーセナルにポイント差を「3」に縮められた一戦での采配自体にはギャンブル的な要素はなかった。エデン・アザールの“偽9番”起用からオリビエ・ジルーの終盤投入まで、調子を落とし始めた過去1カ月で見慣れたパターンが繰り返された。
物言うサッリのチーム批判。
唯一の予想外は、試合後会見でのサッリのチーム批判だった。
元来、正直に物を言うタイプの監督ではある。
ここ数年、会場でよく歌われる「〇〇は意のままに△△する!」というチャントに倣えば、「サッリは感じたままを口にする」といったところである。
今季初黒星を喫した第13節トッテナム戦(1-3)後には「守備面は目も当てられない出来だった」と発言。その後もレスターやサウサンプトンを相手に勝ち点3を奪えないと、「激怒している」と切り出し、メディアを通じてチームを叩いた。
「戦術ではなくメンタリティの問題だ。やる気で相手に負けていた。モチベーションを高めさせるのが極めて難しい連中だ。メンタルを改善できないのなら、このレベルでプレーするべきではない」
この厳しい自軍評は、すべてイタリア語である。普段から通訳同席で会見に臨むサッリだが、それは記者陣の質問を完全に理解できない場合に備えてのこと。通常は英語で話す姿勢が“サッリ・ボール”(チェルシーのポゼッションスタイルを現地でこう表現する)の浸透具合と合わせて評判アップに繋がってもいた。
しかし、アーセナル戦後は母国語での応答。選手への叱咤のメッセージを正確に発信するためだった。