プレミアリーグの時間BACK NUMBER
愛弟子イグアインに賭けたサッリ。
チェルシーの緊急補強は吉か凶か。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2019/01/26 10:00
ミラン在籍は半年間にも満たなかったイグアインだが、決定力は今もなおワールドクラス。恩師のもとで逆襲なるか。
イグアイン加入のプラス要素。
アザールに関するサッリの見解は「現時点ではリーダーシップよりも個人技が特徴的」。否定的に受け取られないようにとの配慮もあってか、すぐさま「独力で一気に勝利を引き寄せられる世界でも屈指の選手」と強調したが、「リーダーとは言えない」と結んだ発言について、ベルギー代表ではキャプテンマークをつけるアザールは好意的に受け取らないだろう。
そんなアザールを本職の3トップ左サイドに戻し、得点源としての重責からも開放する。そう言った意味でイグアインにかかる期待は大きい、イグアインの決定力はアルバロ・モラタとオリビエ・ジルーの両CFをはるかにしのぐだろう。何せ2人合わせて第23節終了時点で挙げたリーグ戦でのゴールは「6」なのだから。
プレミアには、同世代のアルゼンチン人CFセルヒオ・アグエロという超一流がいるが、両者が過去10シーズンに記録した得点数は、アグエロがアトレティコ・マドリーとマンCで決めた計192得点に対し、イグアインはレアル・マドリー、ナポリ、ユベントスでの208得点と、イグアインが上回っている。
イグアインは、中盤の深い位置の司令塔を務めるジョルジーニョと、ナポリで2年半を共にした旧知の仲でもある。そこに、左サイドから得意のドリブルを仕掛けるなどアザールが再び自由になれば、影響力が薄れつつあったジョルジーニョのパスも、本来の効き目を取り戻せるかもしれない。
最盛期は3年前という事実も。
イグアインは、ピッチ外でもサッリ体制にポジティブなものをもたらせる存在だ。前述したナポリでのシーズン36得点は、サッリの「怠け者」評に発奮し、節制をはじめとする努力の成果である。その事実を当人もイタリア時代のインタビューで認めている。
ただし、そのイグアインの最盛期が3年前であることも事実だ。ミランにレンタル移籍していた今季前半戦、リーグ戦15試合に先発して6ゴール。まずまずの数字だが、31歳のイグアインが、セリエAよりもスピーディーなプレミアに即適応できるという保証はない。にもかかわらずの獲得は、チェルシーとしても大きなギャンブル。
つまり、新監督に対する一層のプレッシャーだ。