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長谷部誠はフランクフルトの皇帝。
円熟リベロにファンも絶大な信頼。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2019/01/25 10:30
試合中にチームメートと意思疎通を図る長谷部誠。日本代表を去った今も、彼は欧州組のトップランナーである。
フランクフルト攻撃陣が好調。
さて、僕がウィンターブレイク明け初戦の取材に赴いたのはフランクフルトvs.フライブルクでした。
この時期のフランクフルトとしては珍しく快晴が続いていて、久しぶりの試合開催に市民、ファン・サポーターたちも心を躍らせている様子。冬のブンデスリーガ観戦は、普段はどんよりした雲が垂れ込める中で皆が肩をすぼめてスタジアムまでの道のりを進み、コンコースからスタンドに入った瞬間にストレスを発散させるかのように大声でがなり立てるシチュエーションばかりだったのですが、今回は何だか皆さんピクニックにでも行くような浮かれ気分です。
そもそも、フランクフルトは前半戦終了時点で来季のUEFAヨーロッパリーグ(EL)出場権獲得圏内の6位につけ、今季出場中のELではブンデスリーガクラブ史上初となるグループステージ6戦全勝で決勝トーナメント進出と明るいニュースが続いています。
そんな今季のフランクフルトは爆発的な攻撃陣に注目が集まっていて、前半戦終了時点の得点王争いではヨビッチが12ゴールでトップを走り、他にもアレが9ゴール(6位)、レビッチが5ゴール(20位)と猛威を振るっているのです。
元来熱狂的なフランクフルトサポーターは壮麗な攻撃陣の誕生に拍手喝采で、道行く人々は総じて「俺らのアタッカー、最強だよな!」と自慢し合っています。
冷静な判断でロングフィード。
ただ、現在のフランクフルトの好調は攻撃陣だけに起因しているわけではありません。その一端として、我らが“カイザー”長谷部誠が守備の要としてチームの屋台骨を支えているのも疑いようのない事実です。
ブンデスリーガのゲームではホームチームの選手紹介アナウンスで名前を読み上げ、呼応したサポーターが姓をコールするのが様式美になっています。
サポーターが快哉を叫ぶ選手の名前の音量は、その選手がどれだけ信頼され、人気を得ているかのバロメーターでもあります。1月19日のコンメルツバンク・アレナで「マコト!」がアナウンスされると、彼らは大音量で「ハセベ!」と返しました。何だか、その音の迫力にゾクゾクしてしまいました。素晴らしい。
試合が始まってからの長谷部のプレーも圧巻の一言でした。
拮抗したゲーム状況の中、アウェーのフライブルクは攻撃起点がリベロの長谷部であることを把握して強烈なアプローチを開始します。
長谷部自身も最近は自身に対するプレッシャー強度を承知しているようで、序盤はあえてスリリングな駆け引きを仕掛けているように見えました。ただ、フランクフルトはボールの出処を押さえられてしまうと自慢の攻撃陣が閉塞してしまいます。そこで長谷部はプレー選択をショートパスポゼッションからロングフィード供給に切り替え、状況打開を図りました。