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サウジの女性がクリロナを見た日。
伊スーパー杯開催地問題の果てに。

posted2019/01/23 10:30

 
サウジの女性がクリロナを見た日。伊スーパー杯開催地問題の果てに。<Number Web> photograph by AFLO

イスラム圏において、女性だけでのスポーツ観戦はながらく不可能だった。この日は歴史的な一戦だったのだ。

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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AFLO

 聖地メッカを擁するサウジアラビアはイスラム世界の中心国だ。そこで“欧州5大リーグの公式戦”であるイタリア・スーパー杯が行われた。画期的な出来事だった。

 しかし、当のイタリアでは政界から開催反対騒動が起きていた。

 西欧とイスラム圏どちらにも属さない第三者的立場から、異文化世界でサッカーをするとはどういうことか、少し考えてみたい。

 今年で31回を数えるイタリア・スーパー杯は、先週16日、サウジ第2の都市ジェッダで開催され、C・ロナウドの決勝ゴールでユベントスがミランを1-0で下し、通算8度目の同タイトルを獲得した。

 1988年に始まったスーパー杯は早くから国外開催に積極的で、1993年の米国ワシントン大会を皮切りに、近年は中国やカタールといったアジア大陸市場を開拓。胴元であるセリエAリーグ機構は、タイトルのかかった公式戦をまるごと“輸出”することで貴重な外貨収益を稼いできた。

 10度目の国外開催となる今年、スーパー杯はイタリアの軍需産業とも縁深いサウジアラビアに初めて進出した。

女性差別を理由に反対の声が。

 突如「待った」の声がかかったのは、年が明け、すでに関係者が開催に向け奔走していた頃、1月3日のことだ。

「これは恥だよ。イタリア・スーパー杯をサウジアラビアという国で開催するとは。私は断固抗議する。試合は見ないぞ!」

 現政権の中枢にいながら熱狂的なミラニスタとしても知られる副首相サルビーニは、民族主義政党「同盟」の代表でもある。

 開催に異議を唱える理由は、サウジアラビアに今なお根強く残る女性差別だ。

 同国で女性に車の運転が解禁されたのはつい昨年のことで、女性のサッカー観戦も昨年解禁されたが、それでも家族親族の男性同伴者が絶対必要で、“おひとりさま”もしくは女性グループだけでの観戦は社会的禁忌とされてきた。

 サルビーニにつづけと女性閣僚や右派政党を率いる女性党首からも「女性だけで試合を見ることもチケットを買うことすらもできないサウジでの開催は不快そのもの。サッカー連盟はこの恥ずべき試合を即刻差し止め、別の国で開催すべき」、「サウジ開催に同意した人(リーグ機構やプレーする選手たち)は女性差別に加担したも同じ」といった過激な発言まで噴出した。

【次ページ】 史上初めて男性の同伴なしで観戦できる試合。

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