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修造が訊く! パラカヌー日本代表の
瀬立モニカはリオで障害を受け入れた。 

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松岡修造

松岡修造Shuzo Matsuoka

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photograph byYuki Suenaga

posted2019/01/22 15:00

修造が訊く! パラカヌー日本代表の瀬立モニカはリオで障害を受け入れた。<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

インタビューする側もされる側も、とにかく明るく元気な取材となった今回。パラリンピックの素晴らしさとカヌーの面白さは松岡に伝わったか?

「障害をどこか他人事に考えて……」

 話が核心に入ってきたタイミングで、突如けたたましいモーター音が周囲に響いた。「なんですか、アレは」と思わず松岡さんが後ろを振り返ると、自動車用のスロープを下ってきたのは巨大な観光バス。そのまま桟橋に入ってくると、さらに川の中へ入ろうとして、ギリギリの所でブレーキ! 乗客が沸いている。このバスは「スカイダック」という水陸両用の観光バスで、瀬立さんの練習場所のすぐとなりが、バスの入水スポットになっているのだ。しばし対談は中断を余儀なくされ、アトラクションの目玉でもあるスプラッシュダイブ(入水)の様子を見守る2人。バスが勢いよく川に飛びこむと、盛大に波飛沫が上がった。

松岡「スカイダックすごい! こんな大きなバスが自由に入ってくるんですか」

瀬立「1日3回かな。今ではもうぜんぜん気になりません」

松岡「でも、返し波がすごい」

瀬立「この波に耐えるのがまた良い練習なんです(笑)。海外の選手と競泳みたいにレーンでこう並ぶので、前に出られると波をくらう。そうすると思うように漕げなくなってしまうので、その練習にはちょうど良いです」

松岡「じゃあ、ある意味、最強の練習相手ですね。アイツに勝てれば世界の誰にだって勝てるでしょ(笑)」

瀬立「世界最強です!」

松岡「スカイダック・ショックで話の腰を折られてしまったけれど、さっき、すごく大事なところを話していましたね。パラリンピックに出て、自分を受け入れた。覚悟を決めたと」

瀬立「そうです。自分を受け入れることができて、すっきりしました」

松岡「それは、障害を負った自分に向き合えたということですか」

瀬立「そうですね。今までは障害をどこか他人事として受け入れていたんですけど、障害者としての自覚が芽生えたんだと思います。私は健常者の時からカヌーをやっていたので、どこか無意識に健常者の意識が働いていた。また、障害を見下すじゃないですけど、そういう気持ちがあったのかもしれません。

 その一方で、カヌーに乗っているときは、健常者も障害者も変わらなくなる。『水上はバリアフリー』という言葉があって、それがパラカヌーの一番の魅力なんです。車椅子だと乗り越えられない段差も水上にはない。中学生とだって舟を並べられるし、みんなと一緒に行動できる。私にとっては、何も制限されない、自由になれるのがカヌーの魅力なんです」

松岡「カヌーに乗っているときは、平等ですね。漕ぎ始めたらみんな同じ。そういう感覚? 普段の生活で辛いことがあっても、カヌーを継続したことで心の中はバリアフリーでいられた、ということかな?」

瀬立「そうなのかな」

松岡「では、リオに出て、モニカさんが得たもので一番大きかったものって何ですか」

瀬立「そうですね……あっ! 帰ってきましたよ!」

 グオオオ、と大きな音を立てながら、再びスカイダックが川の下流から上流へと戻ってくる。松岡さんや取材クルーに向かって手を振る乗客。その声援に応える松岡さん。またも対談は中断……。でも、どんな状況も前向きに受け入れるのが、松岡さんはもちろん、パラアスリート・モニカさんの流儀なのかもしれません。「もしこのタイミングでカヌーに乗っていたら、水面でバランスを取りながらバスに手を振るのも良い練習になりますよ」と笑顔で語るのだ。

 スカイダックによる対談中断もまた、パラアスリートの強さを知るきっかけとなった。

(第3回に続く)

(構成・小堀隆司)

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