“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
関川郁万は、いかついけど“良い奴”。
鹿島で昌子と植田を追い越せるか。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/01/17 11:00
2年連続準優勝は悔しさも残るだろうが、その悔しさをバネに飛躍するメンタリティを関川郁万は備えているはずだ。
選手権でも威力満点のヘッド。
そして、左足踏み切りのヘッドだ。
これまではどんなボールでも左足踏み切りを意識していたため、飛んで来たボールにきちんと正対できていないケースもあった。それが「両足どちらでも踏み込める」という自信が加わり、どの方向からボールが飛んで来ても、スムーズなステップワークでヘディングできるようになった。
踏み切ったときのパワー、空中での姿勢もブレず伸びるようになり、ヘディングの最高到達点は明らかに上がった。
「意識して取り組んで以降の自分のプレー動画を見ましたが、空中戦で“伸び”が出てきたなという実感はあります。垂直跳びは高2の選手権予選前は73cmありましたが、今はそれを上回っていると思います。ボールに対してまっすぐに合わせられているし、1対1になった時も姿勢が良くなったことが目に見えて分かった」
今大会、磨き上げられたヘッドは猛威を振るった。攻撃面では3回戦の星稜戦、準決勝の瀬戸内戦、そして前述した決勝の青森山田戦と、すべて左足踏み込みから、頭一つ抜け出して威力満点のヘディングを突き刺した。
決勝でも「ようやく『本気のエアバトル』ができる」と待ち望んだ青森山田の192cmのCB三國ケネディエブスとの空中戦も一歩も譲らず、競り勝つ場面も多くあった。これはまさに彼が1年間で培った努力の賜物であった。
見た目は怖いけど、良い奴。
精神面でも成長の跡が見られた。以前は闘争心を前面に出してプレーする反面、カッとなりやすく平常心を失う場面があった。だが、2018年は5月までピッチに立てず、時にはプレミアイーストの試合で太鼓を叩きながら応援するなど、チームを客観的に見つめたことで、いろいろな発見があった。
「下級生はどうしても上級生に遠慮してしまう。話しやすくするために、こっちから積極的にコミュニケーションをとらないといけないと思った」と、練習後や寮では積極的に声を掛けた。寮の夕ご飯も敢えて後輩の輪の中に入って、1、2年生と分け隔てなく話した。
「最初はみんな見た目で怖がっていましたけど(笑)、徐々にたわいもない話だけでなく、積極的に意見などを言ってくれるようになった。(1年生のFW)森山一斗なんかは、もうめちゃくちゃ仲良いですよ(笑)」
確かに彼は見た目がいかついし、威圧感もある。だが、よく話してみるとかなり“良い奴”だ。人に対して思いやりと優しさを持ち、情に厚く、センチメンタルな側面を持ち合わせている。