“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
関川郁万は、いかついけど“良い奴”。
鹿島で昌子と植田を追い越せるか。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/01/17 11:00
2年連続準優勝は悔しさも残るだろうが、その悔しさをバネに飛躍するメンタリティを関川郁万は備えているはずだ。
準々決勝後に1人涙して。
こんなエピソードがある。
選手権準々決勝が終わって、月曜日に普通に登校して教室で仲間とたわいもない話をしていると、「ふと『もうみんなともお別れか』とか、『あ、これももう少しで終わるのか』と思ったら悲しくなってしまって……」と、会話の輪を外れ、1人になって涙を流した。そして、その日の夜も寮の部屋で1人涙した。
仲間想い、後輩想い、そしてチーム想い。プレーできなかった半年間でチームを俯瞰して見られるようになり、復帰してもその視点を忘れず、時に厳しく、時には優しく立ち振る舞ったことで、精神的に大きく成長できた。
「今年は精神的に自立できたというか、責任感を持ってやれたと思います。冷静さと激しさを上手く同居させることができつつあると思います」
それが関川が最高学年で掴み獲った“2つの成長”だった。
昌子、植田を追い越せるように。
高校サッカーに別れを告げ、アジア王者の鹿島の一員としての新たな日々が始まった。
お手本としたかった昌子源(トゥールーズ)と植田直通(セルクル・ブルージュ)ともにクラブを去ったが、関川の熱い想いは変わらず燃え盛っている。
「2人がいなくなったのは正直残念と思う気持ちはあります。でも、この2人が“いいCBを育てるのは鹿島”だと証明してくれた。だからこそ“鹿島のCB”ということで、自然と僕も注目されると思っています。もちろん試合に出られる保証はないですが、チョン・スンヒョン選手も韓国代表で抜けることもあるでしょうし、本当にそういうチャンスが来た時を確実に生かせれば、評価に繋がるはず。
いつか来るチャンスのために、最善の取り組みをしたいと思っています。真の意味で鹿島の一員として力になれるかは自分次第。あの2人に近づき、追い越せるようにやっていきたい」
鹿島のCB関川郁万が、日本を代表するCB関川郁万になるために――。強くて優しい男のプロサッカー人生が今、幕を開けた。