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フェンシング高円宮杯W杯を戦う
若き精鋭。松山、西藤、鈴村の覚悟。
text by
宮田文久Fumihisa Miyata
photograph byYasunari Kikuma
posted2019/01/17 07:30
全身ビームスのスーツに身を包んだフェンサーたち。写真中央上が松山、下が西藤、左が鈴村。
経験豊富な松山が持つ自負。
2016年の同大会チャンピオンであり、ナショナルチームのキャプテンでもある松山は、上野優斗(中央大)との準決勝、14-14からの一発勝負に敗れ、決勝進出を逃した。
「準々決勝で西藤選手に勝った時点で、2日後に控えていた決勝のほうに意識が向かってしまっていました。目の前の相手に対して戦略を立てることなく、何となく準決勝の試合に臨んでしまったんです。その油断が命取りだったと思います」
国内ランキングトップ。国際大会での経験も豊富な松山には、十全に力を発揮できれば、こんなところで敗れる自分ではない、という自負がある。
「決勝には残れなかったけれど、今の自分の技術には自信を持っていますし、特にここ2年ほどで、自分のスタイルが見えてきたんです。僕はディフェンスもオフェンスも、いろんな引き出しを持っていて、頭を使いながら、相手によって柔軟にフェンシングを変えることができるタイプだな、と、改めて自分を位置付けています。
たとえばディフェンスが強い選手に対しては、無理にアタックを仕掛けるのではなくて、相手を動かしながら駆け引きの中で勝つ。以前は第三者の意見に左右されてしまっていた頃もあったのですが、ようやくスタイルがわかってきました」
「真ん中に持ってきたい」
実際に試合を見ていると、そのオールラウンダーぶりもさることながら、彼のプレーや所作には、他のフェンサーとは違う華やかさがある。空いた時間には近年流行りのクラブミュージックであるEDMを聴いたりと若者らしい一面も見せるが、そのプレースタイルにはある種の優雅さが感じられるのだ。
「決して自分がそうだとは思っていませんが、華やかさやスター性というのは、スポーツ選手として大事だと思っています。
僕は昔から、アンドレア・バルディーニという、イタリアのスター選手に憧れていたんです。自分と同じ左利きで、本当にプレーが華やかで。だからプレースタイルや技はもちろん、マスクを取る時、剣を曲げる時とか……小さい頃はちょっとした仕草を真似していましたね(笑)。
バルディーニもそうでしたが、サッカーや野球でも、『真ん中に持ってきたい選手』っているじゃないですか。自分もそういう選手になりたいと思っているんです」
高円宮杯では、とにかく自分のプレーに集中して、「勝つ」ところを観客に見せたい、と松山はいう。「それこそが選手としての仕事ですから」と。その勝利の先にこそ、東京五輪はあると、彼は信じている。
また彼はおそらく日本代表チームのキャプテンとして、団体戦でも日本の2大会連続メダル獲得に向けてチームメイトを鼓舞していくことだろう。
「キャプテンとして、メンバーへの声がけなどもしっかりしていきます。東京五輪へとつながる大事な大会です。しっかりと結果を残したいですね」