球道雑記BACK NUMBER
ドラフトまでに絶対覚えて欲しい!
“白鴎大のラミレス”とは何者だ。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byRyotaro Nagata
posted2019/01/13 08:00
大山悠輔(阪神)や高谷裕亮(ソフトバンク)を輩出した名門・白鴎大の新主将に就任した、ラミレス・レンソ三塁手。
逆転を信じて盛り上がったが……。
そんなラミレスの素の一面を感じることができたのは、横浜市長杯準々決勝、神奈川大学戦の試合後のことだ。試合の感想を求めると、彼は真っ先にこう呟いた。
「4年生ともう一緒に出来ないんだなって……。それが一番です」
グラウンドからベンチ裏へ引き揚げる際、とめどなく涙がこぼれたのだろう。その目は真っ赤に充血していた。
この試合、2対2の同点で突入した延長タイブレーク。先攻の神奈川大が3点を奪うと、これで勝負あったかという空気が球場中に漂い始めた。
その裏、白鴎大が意地を見せる。代打・龍昇之介の中前適時打で2点を返すと、なお一死一、二塁の場面で打席には4番のラミレスを迎えた。
この秋は関甲新学生野球連盟で2本塁打を放ち、打点王にも輝いたラミレス。当然、一発逆転が期待された。
しかし、カウント2-2からの5球目、低めのボールを掬い上げると、その打球は力ないライナーとなって、セカンドのミットに「ポスン」と収まった。
さらに不運だったのがこのとき、ランエンドヒットがかかっていたことである。飛び出した走者は帰塁することが出来ず、あっけない形でゲームセット。逆転を信じて、盛り上がったスタンドの応援団も、さすがに意気消沈した様子だった。
「あれから相当落ち込みました」
その試合から1カ月半が過ぎた12月中旬、栃木県小山市にある白鴎大学のグラウンドに行って、ラミレスと会ってきた。まずは話のとっかかりにと、その試合の出来事を振ると、少しすまなそうな表情を浮かべ、彼はこう返した。
「正直、あれから相当落ち込みました。1人になるとやっぱり考えちゃうんですよね」
今でもふとした場面で、あの試合、あの打席のことが頭をよぎるという。
「バットを振り切っていたら内野の頭を越えていただろうか?」
「逆に転がしていれば二死二、三塁となって次のバッターが返してくれたんじゃないか?」
そんな自問自答を繰り返しては、頭からかき消す。だからこの冬の自主練習時間は、あらゆる場面を想定してひたすらバットを振る時間に充てた。