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コンサドーレ躍進の理由と2019年。
主力とベテランが離脱する影響は?
posted2018/12/27 16:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
J.LEAGUE
リーグ戦4位。
シーズン前、今季のコンサドーレ札幌のここまでの躍進を予想できた人は、どのくらいいただろうか。
シーズン前、この順位を予想できなかったのは、いくつかの理由があったからだ。
最大の理由は、ペトロヴィッチ監督のサッカーの特殊性だ。
1トップ、2シャドーに両ウイングバックが連動して相手を圧倒する攻撃的なサッカーは、2017年残留を果たした守備重視の札幌のサッカーとは真逆のスタイルである。その特殊なサッカーで守備的なスタイルが染みついた選手の意識を変え、チーム戦術として浸透させるのにそれ相応の時間を要すると思われていた。
だが、ペトロヴィッチは、その守備の意識の高さを逆手に取った。
森保一がペトロヴィッチからサンフレッチェ広島を引き継いだ時、完成された攻撃のスタイルに守備のやり方と意識を浸透させていった。そうして攻守のバランスが取れたチームにリニューアルされた広島は、その後、3度のリーグ優勝を実現することになる。
守備の遺産が生きた札幌。
札幌は、その逆ヴァージョンである。
選手全員が高い守備意識を持っている中、攻撃のやり方を練習で何度も繰り返して浸透させていった。その結果、攻守の切り替えが早くなり、とりわけボールを失った後の鋭いプレスは札幌の持ち味になった。カウンターに対する脆さはあったが、遺産が生きた形だ。
攻撃面ではサイドからのクロスやつなぐだけではなく、難しくなれば前に放り込む潔さも見せた。広島や浦和の時とは異なり、状況によって臨機応変に対応するサッカーを実践していったのである。
急速にチームを仕上げていくために、ペトロヴィッチは浦和でもそうだったように試合で起用する主要グループを作っていった。その中軸の選手たちには、技術に加えて運動量とスピードを求めた。必要条件を満たした固定メンバーで戦うことでチーム戦術の浸透が加速し、選手間のコンビネーションも育まれていった。