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メジャーで守備シフト制限の議論。
戦術に対処してこそ知恵比べでは。
posted2018/12/24 11:30
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph by
Getty Images
試合を見ているファンの方々は、どう感じているのだろうか。
昨今のメジャーでは、打者が変わるたび、さらにカウント別で、守備シフトが目まぐるしく変更される。基本的には、「引っ張り打者」への対策とはいえ、かなり落ち着きがない。当然のように、守備隊形が変われば、バッテリーの配球も変わる。
そこに、長年にわたる打者と投手の「駆け引き」は、存在するのか――。
極端な守備シフトは、今に始まったわけではない。1946年(昭和21年)、レッドソックスの強打者テッド・ウイリアムスに対し、専用のシフトが敷かれたことが、最初と言われている。
その後、日本にも導入され、'60年代には広島が、巨人・王貞治に対し、内野手だけでなく、外野手までも右寄りにする「王シフト」を敷いたことで、一躍、極端な守備隊形が脚光を浴びるようになった。
データ分析と徹底的なシフト。
ところが、近年、セイバーメトリクスなど細かいデータ分析が進み、いわゆる長距離打者だけでなく、多くの選手にシフトが敷かれるようになった。その結果、リーグ全体の打率は1999年に2割7分1厘だったのが、2018年は2割4分8厘まで下降した。
もちろん、シフトの影響だけではないだろうが、こちらもデータ重視に伴う「フライボール革命」と呼ばれる打撃スタイルの流行もあり、安打は減っても本塁打が増加するなど、顕著な変化が見られるようになった。
この状況に危機感を抱いたコミッショナーのロブ・マンフレッド氏ら機構首脳が、シフトに制限を設けることを検討するなど、何とも不思議な論議が交わされるようになった。
そもそも野球という競技は、投手の球速や打球の飛距離を争うスポーツではない。相手の策に的確に対応し、より多くの得点を取り合うため、失点を防ぐための工夫を凝らしてきたことで、戦術、戦略面でも発展してきた。