オリンピックへの道BACK NUMBER
陸上女子がリレーの選手を公募。
五輪出場が危機、奇策の狙いは?
text by

松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKyodo News
posted2018/12/09 11:00

アジア大会女子4×100mリレーで5位、このままだと東京五輪は厳しい状況だ。
応募資格は、全国大会のトップレベル。
そうした近年の成績に加え、「4×100mリレーは日本記録を出しても(出場できる16カ国の枠に入るのは)厳しい状態」と陸連が説明するほど、シビアな状況にある。そして公募という手段を取り入れることになった。
ただ応募資格の中に、例えば100mなら「2018年度に11秒75を突破している、あるいはそれに相当すると判断できる競技成績を有する者」と、記されている。
これがどのくらいのレベルかというと、6月の日本選手権決勝でこのタイムをクリアしたのはわずか4名。今年の全国高校総体決勝の優勝タイムは、アジア大会に出場した御家瀬緑の11秒74。つまり、公募資格は全国大会のトップレベルのタイムということになる。
ADVERTISEMENT
「他競技からの挑戦も受け入れる」と広く人材を求める姿勢を示しているものの、隠れた逸材が公募によって見出されるとは考えにくい。ボブスレーなどのように、人材不足のために他競技から選手を発掘しようというケースとは事情が異なる。
一箇所に集めて強化すること。
では、公募が強化につながるのはどのような部分だろうか。
手がかりは次の言葉にある。
瀧谷賢司女子リレー担当オリンピック強化コーチは、100mでは福島千里に続く選手が出ず、400mでも千葉麻美を超える選手が出ないことを踏まえた上で、「若い力も熟練の選手も一緒に1つのチームとなって、海外遠征や合宿を継続的にやっていくことが、女子が強くなっていく道ではないかと思って、今回のプロジェクトを立ち上げた」と説明している。
これは、選手それぞれの所属先での強化に行き詰まりを覚えたことから、有力選手を1つの場に集める機会を増やし、継続的に強化を図っていきたいという狙いを示唆している。
リレーをチームとして強くするといっても、4人の走力の向上がなければそれはかなわない。公募という形式を通じて選手を集め、1人ひとりの成長を促すことができるかどうか、それが今回の試みの成否を握ると言ってもよい。
そういう意味では、集めた場でどんな取り組みができるか、選手たちの意識にどう刺激を与えられるかが重要となってくる。
12月15日に概要説明会が開かれ、年が明けて1月13日と26日にセレクションが行なわれる。まずはどのような選手が公募によって選ばれるかに注目だ。
