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陸上女子がリレーの選手を公募。
五輪出場が危機、奇策の狙いは?
posted2018/12/09 11:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Kyodo News
先日、日本陸上競技連盟がした1つの発表が注目を集めた。
2020年の東京五輪に向けたプロジェクトで、女子短距離リレー種目の候補選手を公募するというものだ。
これまでも、一部の競技で代表選手候補を公募でセレクションする手法はあったとはいえ、それは競技人口が極めて限られているなどの事情があってのことだ。
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今回は「ワイルドカード」という形で、公募以外にも一定水準以上の選手を選ぶ仕組みを設けたが、陸上競技ということを考えると異例の試みだ。
それでもこのプロジェクトの実施に踏み切ったのは、「このままでは東京五輪に出られない」という危機感からのものだ。その背景として、開催国枠がないという事情がある。
オリンピックなどの国際大会では、開催国の選手やチームに対して自動的に出場枠が与えられるケースがある。先月はバレーボール男女にそれが与えられることが伝えられた。
この枠は競技ごとにシステムが異なり、陸上は「1964年東京大会のときのような、開催国枠というものはない。そのため、私たちは、出場権を自分たちの手で、実力で取らなければならない」(山崎一彦プロジェクトリーダー)
女子のリレーは選手層が薄い。
そういった状況の中で、女子の実力、中でもリレー種目が焦点となった。
リレーは陸連が力を注いできた種目なうえに、観る人からの関心が集まりやすい種目でもある。日本チームが出られなければ影響は大きい。
一方で現実はというと、4×100mリレーでは2012年のロンドン五輪、4×400mリレーは2008年の北京五輪を最後に出場できずにいる。今夏のアジア大会の4×400mリレーでは、800mや七種競技をメインとする“本職”ではないメンバーでチームを組むなど、選手層の薄さも浮き彫りになっていた。