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長谷部誠は常に変化しつつ生き残る。
AFC最優秀選手と、新体制での信頼。 

text by

寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byAFLO

posted2018/12/04 11:30

長谷部誠は常に変化しつつ生き残る。AFC最優秀選手と、新体制での信頼。<Number Web> photograph by AFLO

ドイツに渡って10年以上になるが、長谷部誠の出場試合が2ケタに届かなかったシーズンはない。

次々と変化しながら生き残ってきた。

 ドイツに渡ってきた当初、立ちはだかるさまざまな壁を前にした長谷部は、「すぐに日本へ戻るかもしれない」と感じたという。しかし同時に「そうやすやすと帰れるわけもない」という闘争心も湧いたという。そのうえで必要なのは、自身を変えることだと悟った。

「もちろん葛藤はあった。パーソナリティーとか、いろんなものを変えることに抵抗もあったけど、そこをやらないとこっちではやっていけないと思った。自分の良さをわかってもらえないと思うよりも、だったらわからせるために、自分が変われるかどうか。それができるというのは、適応できるということだから。僕はそれができたんだと思う」

 今年の1月にインタビューした際、長谷部はそんなふうに自身の欧州でのキャリアを振り返ってくれた。

 そして、マルセイユ戦後、「今の長谷部選手は、日本人選手だけでなく、アジアの選手にとっての指針にもなるのではないか?」と訊いたとき、こんなことを語った。

「自分はポジションもそうですけど、本当にいろいろと変化しながら、プレースタイルも変わっていって、この年齢までやれている。選手それぞれだと思うんですけど、そういう部分を見て、なにか感じてもらえたら、もちろんそれはありがたい。僕自身もまだまだやっぱり上を見られる状況なので、選手としてもより上を目指したいと思っています」

「彼は常にプレーしたいと思っている」

 ブンデスリーガで優勝はしたものの、ヴォルフスブルク時代はボランチでの起用機会はわずかだった。プレミアへの移籍が実現間近にまでいったが成立せず、その後はトップチームの練習に参加させてもらえず干されたこともある。

 ボランチで挑戦するために移籍したものの負傷で長期離脱、チームを降格させてしまった。新たに移籍したフランクフルトでも、サイドバックでの起用が続いた時期もあった。そしてコバチが登場し、ボランチ、リベロと念願だった「真ん中」でプレーを続けている。それでも、入れ替え戦で敗れていれば今の長谷部はいなかっただろう。

「先を見てもしょうがない。大事なのは今に力を尽くすこと。逆算してもそのようにいかない。そういうキャリアだからね」と1月の取材で笑っていた。

 12月2日ブンデスリーガ第13節。ヴォルフスブルク戦で長谷部は公式戦15試合連続出場を飾っている。「長谷部が休みたいと言えば、休みを与えるけれど、彼は常にプレーしたいと思っている選手なんだよ」と話すヒュッター監督にとって、長谷部は替えのきかない存在なのだろう。しかし、9位のヴォルフスブルクに1-2で敗れた。今季4敗目とはいえ、中位のクラブに負けたことが、どう響くのか。

 思えば、フランクフルトは毎シーズン前半期には強い印象がある。ここからが今季最初の正念場なのかもしれない。35歳でのチャンピオンズリーグ出場までの道のりは長いが、常に新しい目標へ向かえるというのもまた幸せなキャリアだ。

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