ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
天心vs.メイウェザーで思い出す、
異種格闘技トラブルと“猪木アリ”。
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byAFLO
posted2018/12/04 07:30
今なお語り継がれる猪木vs.アリ。ボクサーの異種格闘技戦における1つの到達点であったことは間違いない。
ボクサーの異種格闘技はトラブルだらけ。
この猪木vs.アリ戦以外でも、これまで超大物ボクサーが出場する異種格闘技戦では、必ずといっていいほど、なんらかの問題が起きてきた。那須川天心vs.メイウェザー会見にも同席した、現RIZIN統括本部長である高田延彦も、現役時代にそんな試合を経験している。
高田は91年12月22日、両国国技館で行われたUWFインターナショナル初のビッグマッチで、プロボクシングの元WBC世界ヘビー級王者のトレバー・バービックと対戦。
この試合は、猪木vs.アリの精神を継承するというコンセプトで組まれたもので、高田の対戦相手として、ボクシングの現役世界王者か元王者を条件にリストアップ。何人かの候補の中から、モハメド・アリの最後の対戦相手であり、マイク・タイソンに敗れるまで世界王者だった現役ヘビー級ボクサーのバービックが対戦に応じたことで実現した。
直前にローキック禁止を要求。
当時、バービックはドン・キング・プロダクションズ傘下のプレーバーマン・プロモーションズの契約選手であり、Uインターはプレーバーマン・プロモーションズと契約。猪木vs.アリを再現するべく、いわゆる"プロレス内異種格闘技戦"ではなく、リアルファイトでの格闘技戦として行うことに合意した。
しかし大会前日になり、バービックがローキックの禁止を要求。結局、試合はそのまま行われたものの、高田のローキックを食らったバービックがリング外に逃走。わずか1ラウンド2分52秒、試合放棄という後味の悪い結末となってしまった。
この時、バービックが試合中もレフェリーに対して、しきりにローキックをやめさせるようアピールしていたため、一部では「下半身への攻撃は禁止のルールがあったのではないか」とも言われた。しかし関係者によると、もともとローキックは禁止事項には入っていなかったという。
それがなぜ問題になったかといえば、当時はまだMMA(総合格闘技)が確立する前の時代。ローキックの威力や恐ろしさが認識されていなかったため、ルール交渉時に禁止にする旨の話は出なかったが、その後試合直前になり、ローキックが危険な攻撃だと認識したバービックが禁止を主張し、押し通そうとしたことが真相と言われている。