ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
天心vs.メイウェザーで思い出す、
異種格闘技トラブルと“猪木アリ”。
posted2018/12/04 07:30
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph by
AFLO
「やはりこうなってしまったか」
多くのファンや関係者がそんな思いを抱いたことだろう。
今年の大晦日に開催される格闘技のビッグイベント『Cygames presents RIZIN.14』の超目玉カードとして、11月5日に発表された那須川天心vs.フロイド・メイウェザーJr.の一戦。
キックボクシング28戦全勝の“神童”が、50戦全勝で世界5階級制覇を成し遂げたボクシング界のレジェンドに挑む超・夢の一戦だけに絶大な反響があったが、相手は1試合で300億円を稼ぎ出したこともある桁違いの大物。それだけに発表した時点から「本当に実現するのか?」と、疑問視する声も上がっていた。
すると対戦発表会見からわずか3日後の11月8日、メイウェザーが自身のインスタグラムで「那須川天心との公式試合に一度も合意していない」「3分3ラウンドのエキシビションで、高額の料金を支払うごく少数の富裕層の前でやるもので、広くテレビで放送されるとは認識していなかった」などと主張。いきなり暗礁に乗り上げてしまったのだ。
結局、RIZINの榊原信行実行委員長が急遽渡米し再交渉した結果、「3分3ラウンド制の限りなくボクシングに近いルールでの“非公式戦”として行う」と、あらためて対戦実現を発表。
ただ榊原委員長自身、当初から「大晦日当日、両選手がリングに上がって向かい合うまで安心できない」と語っていただけに、まだこれから一波乱、二波乱ある可能性も否定できない状況だ。
猪木vs.アリを思い起こした。
この一連の流れを受けて、同じ超大物ボクサーの“異種格闘技戦”として、1976年のアントニオ猪木vs.モハメド・アリ戦を思い起こした、古くからのプロレスファンも多いことだろう。
猪木vs.アリも実現まで紆余曲折あり、当初アリは「エキシビション」「エンターテインメントとしてのプロレスリングショー」と認識して対戦を受諾。来日した際、通訳のケン田島に「いつリハーサルをやるんだい?」とたずね、「ノー。リハーサルはない。これはリアルファイトだ」と告げられ驚いたというエピソードも知られている。