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柔道73kg級に還ってきた大野将平。
「相手がどうこうより自分の柔道」
posted2018/12/02 11:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
還ってきた。大会での堂々たる姿は、そう思わせた。
毎年、年の瀬が押し迫る頃に開催されてきた柔道の国際大会グランドスラム・東京は、東京体育館改修のため、今年は11月23日から25日の3日間にわたり大阪で開催された。
2年後の東京五輪を意識する選手たちのせめぎあいが見られたが、中でもスタンドから見て鮮やかだったのは、24日に行われた男子73kg級決勝で、海老沼匡を破って優勝した大野将平だった。昨年は負傷の影響もあって棄権を余儀なくされたこの大会で、しっかりと強さを見せつけた。
大野は2年前のリオデジャネイロ五輪の金メダリストである。そればかりではない。「これぞ日本柔道」と評された一本をとる柔道を信条とし、接近戦を挑む海外勢にひるまない姿が、観る者に鮮烈な印象を与えた。インパクトの強さはその年の国際柔道連盟・年間最優秀選手に選ばれたことでもよくわかる。
その後、大学院の修士論文作成のため少しばかり競技から遠ざかったが、今年になって本格的に再始動。2月のグランドスラム・デュッセルドルフで、リオ五輪以来1年半ぶりに国際大会での優勝を飾った。
決勝でまたしても向かい合った2人。
だが、すんなりと勝ち続けることはできなかった。4月の全日本選抜体重別の準決勝では、66kg級から階級を上げた海老沼匡に2度の技ありを取られて敗北を喫した。今夏の世界選手権代表からも落選。しかし代わりに出場したアジア大会では、しっかりと優勝を果たしている。
そんな中で迎えたグランドスラム・大阪だった。順調に勝ち上がり、決勝で迎えたのは、やはり海老沼。
海老沼もまた、66kg級でロンドン、リオと2大会連続で銅メダルを獲得し、世界選手権でも優勝している実力者だ。
互いの柔道を知り尽くしている両者だが、慎重になることなく激しく技をかけあう。勝負を決めたのは、残り15秒。大野は隅落としで技ありを奪い、優勢勝ちをおさめたのである。