プロ野球亭日乗BACK NUMBER
旧態依然とした野球指導法に革命を!
筒香嘉智、打棒開眼に至る秘話。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2018/11/30 08:00
会心の当たりで、ホームランの打球の行方を追う筒香嘉智。東京五輪での主砲としての活躍が期待される。
「コーチは教える人でなく導く人」
大村コーチの指導も「こう打て」「ああ打て」という強制はない。その目標に向かって、どういうスイングが求められて、そのスイングを自分のものにするためには、どうしたらいいのか。そのアイデアを大村コーチが出して、筒香が練習する。その繰り返しだったという。
そうして翌2014年には一軍で打率3割、22本塁打、77打点をマークして、その後の「日本の4番」への一歩を踏み出すことになる。
「コーチとは教える人ではなく、導く人という意味なんです」
筒香は言う。
先のユニセフのイベントに送ったメッセージでも「大切なことは目の前の結果や大人側の自己満足ではなく、子供達の未来が主体であることだと感じています」と語ったが、今の少年野球で心配していることの1つが、大人の、指導者の教え過ぎということなのである。
飛びすぎる金属バットを有効に利用するために、ポイントを前にしてあおるような打ち方を教える指導者。
簡単に相手打者を抑えるために、安易に変化球、特にスライダーを覚えさせようとするコーチ。
そうした教え過ぎの文化は、結局は子供達の未来につながらないのではないか、ということだ。
「3年前にドミニカ共和国のウインターリーグに参加したときに見た向こうのコーチは、子供に絶対に強制しない。適度な距離を保ちながら、困ったときに手助けをする。そういうシステムが確立されています」(筒香)
そういう環境で育ったことが、将来的にメジャーリーグで活躍する選手を多く輩出することにつながっているのではないか。そう考えると納得させられることが多数あるということだ。
子供自身が試行錯誤して練習すること。
筒香がスーパーバイザーを務める「堺ビッグボーイズ」の小学部「チーム・アグレシーボ」もそうだが、中学生のチームも日曜日の午後の練習は自主練習で子供が自分でメニューを考えるように指導している。
「最初は何をやっていいのか分からずに、右往左往する子供もいましたが、だんだん子供たちが自分で色々なことを考えて、今は自主練習というスタイルが定着して、選手もそれを有効に使えるようになってきています」(瀬野竜之介代表)
自分で考え、工夫して上手くなっていく。
筒香が語るように、最初に答えを出さないコーチングこそ、子供たちの未来を主体にした、本当の将来につながるはずである。
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