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中国の新鋭・鄒敬園の圧倒的美しさ。
日本体操界、東京五輪への危機感。
posted2018/11/26 18:30
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph by
alliance/AFLO
もはや革命と呼びたいくらいの演技だった。
10、11月にドーハで開催された世界体操で、美しい体操を世界にアピールしたのは、内村航平でもなければ白井健三でもなかった。
20歳の新鋭である、鄒敬園(スウ・ケイエン)。世界選手権連覇の立役者となった、中国の秘密兵器である。
とくに種目別で優勝した平行棒の演技は世界を驚かせた。Dスコア(7.000)がとびきり高いだけでなく、Eスコア(9.433)も極めて高い。2位のオレグ・ベルニャエフ(ウクライナ)に1点近い大差をつける圧勝だった。
雑誌Number966号では“体操ニッポンの未来”について、アテネ五輪の団体で金メダルを獲得した6人のレジェンドたちに話を聞いているが、その誰しもが鄒の演技を絶賛していた。
「あの平行棒はけっこう領域が違いました。減点もないし、質も高いし、演技にリズムもある。やばいときの中国が戻ってきた気がします」(中野大輔)
「とんでもない点数。これはどこも(点数を)引けないと思うような演技を追求していて、減点箇所はちょっと倒立で反ったところがあったくらい。はっきり言って脅威です」(鹿島丈博)
世界で賞賛された演技は、2020年の東京五輪で団体連覇を目指す日本にとっては脅威そのものだ。
得意の平行棒で中国と差が出た。
演技の難しさを示すDスコアは技の難易度によってあらかじめ点数が決まっているが、演技の出来映えを示すEスコアは技の完成度や美しさを審判が見て判断する。
鄒があれだけの演技をした以上、今後はよほど美しい実施をしない限り、平行棒のEスコアは点数を抑えられてしまう可能性が高いだろう。
日本の選手が比較的得意としている平行棒で、中国と差を広げられるのは致命傷になりかねない。