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中国の新鋭・鄒敬園の圧倒的美しさ。
日本体操界、東京五輪への危機感。
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byalliance/AFLO
posted2018/11/26 18:30
身軽な動きで高難度の技を見せた鄒敬園。世界選手権の種目別平行棒連覇を達成した。
美しさで中国、ロシアに遅れを。
代表チームの監督である水鳥寿思は審判の評価基準についてこう話す。
「これまでは芸術性や美しさが高く評価されてきたのが、今大会ではより正確かどうかを審判が厳しく見る傾向がありました。
審判の感性に頼りすぎてしまう危険性は国際体操連盟も国際オリンピック委員会もどちらも感じていて、点数には明確な理由が求められる。
そうした時代の流れもあるので、Eスコアは今後も小さなミスが厳しく見られるようになると思います」
これまで「美しい体操」といえば、それは日本の代名詞だった。ところが今大会では、「率直に、美しさや実施の部分で日本は中国やロシアにちょっと見劣りしてしまった」(冨田洋之)と、逆に団体で敗れた両チームに差を広げられてしまった。
次の東京五輪で鄒が団体の主力メンバーに入ってくるようであれば、日本は相当厳しい状況に追いこまれるだろう。
米田功は言う。
「鄒の演技は数年前の(内村)航平のようでした。とんでもない選手が出てきたという印象で、おそらく航平が世界デビューしたときも中国やロシアはこれくらいのショックを受けたのでしょう。あと2年あれば当然、彼は団体のメンバーにも入ってくる。日本は相当追い込まれたと思います」
正確性や動きの質で日本の上に。
日本チームが進化していないわけではない。
種目別の床で銀メダルを獲得した白井も、個人総合の決勝へ駒を進めた萱和磨や、谷川航も、それぞれに得意種目で見せ場を作った。
だが、五輪王者の背中を追って研鑽を重ねてきた中国とロシアの体操は、技の正確性や動きの質で日本の上を行っていたと言わざるを得ない。