スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
冬の争奪戦とハーパーの行方。
急浮上したフィリーズの戦略とは。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byAFLO
posted2018/11/23 10:00
史上最高額の大型契約を噂されるワシントン・ナショナルズのブライス・ハーパー。
高給取りが少ないフィリーズ。
2018年、フィリーズの年俸総額は推定1億ドル前後と少ない。大リーグ全体でも23位だ。そんな球団に10年総額3億3000万ドル以上の大金が支払えるのか、と思われそうだが、若手主体のフィリーズには高給取りの選手が少ない。
'19年に2000万ドル以上をもらうことになっているのは、カルロス・サンタナ内野手とジェイク・アリエータ投手ぐらいで、エースのアーロン・ノーラなどは大谷と同等の57万ドル強という低年俸だ。
だとすれば、ハーパーに年俸3500万ドルを用意するのは不可能なことではない。加えて、このチームは外野が弱い。今季終盤戦で大きく崩れたのも、若手選手たちの不安定な打撃が一因だった。
そこにハーパーが加入してチームの柱となってくれるなら、この球団の長期的な展望はさらに明るくなる。そもそも、チーム再建の目標時期は2019年ごろに設定されていたはずだ。去年今年と、一時的にでも希望の光が射したのは、まだ予告篇にすぎない。
もし、ノーラやハーパーを中心とする清新なチーム再建が実現したら、フィリーズはきっと面白い存在になる。そのためには、10年総額3億5000万ドル前後の出費もやむをえないのではないか。と同時に、ハーパー自身がもうひと皮剥けることも必要だろう。
本塁打の固め打ちは迫力十分だが、三振を減らし、打率3割と本塁打30本、OPS=.940前後の成績を安定して残せるようなら、この選手も本物だ。刮目して期待したい。