スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
冬の争奪戦とハーパーの行方。
急浮上したフィリーズの戦略とは。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byAFLO
posted2018/11/23 10:00
史上最高額の大型契約を噂されるワシントン・ナショナルズのブライス・ハーパー。
OPSが9割の26歳、ハーパー。
だが最大の注目株は、なんといってもブライス・ハーパーだろう。'92年10月生まれ。デビューが早かった('12年に19歳で登場)だけに、FA資格の獲得も26歳と早い。しかも代理人が、凄腕のスコット・ボラスだ。
7年間の大リーグ生活で取ったタイトルは、'15年の本塁打王(42本)だけだが、通算安打数=922、通算OPS=.900というのは、やはり一級品の数字だ。三振数が増えているのは懸念材料だが、これはまだ修正が利くと思う。
ハーパーには「史上最高額の大型契約」もささやかれている。
これまでの最高額は、'14年11月にジャンカルロ・スタントン外野手(現ヤンキース)がマーリンズと結んだ13年総額3億2500万ドルの契約だ。単年でいうと、ダイヤモンドバックスのザック・グリンキー投手がここ3年連続で3400万ドルの年俸を得ている。
ハーパーにはこれと同等、あるいはこれを超える金額が用意されているらしい。いや、辣腕のボラスが、期間・金額ともに大型の契約を要求して引かないのではないか、という声も方々から聞こえてくる。
ヤンキースは3億ドル超え契約も。
となると、真っ先に名前の挙がるのは、金満球団のご三家、ヤンキース、ドジャース、カブスだ。だが、ドジャースとカブスは、明らかに財布の紐を締めにかかっている。両球団とも若手の外野手が着実に育っているだけに、あえてハーパーを取りにいくことはないのではないか。
残るヤンキースは、一説によると、10年総額3億3000万ドルを用意していると聞く。このところ珍しく人件費を節約しているように見えたのも、ハーパー狙いの伏線なのかもしれない。左の強打者はなんとしても欲しいところだが、ハーパー自身がニューヨークでの生活を望むかどうか。
3球団以外にも、噂にのぼっている有力球団はある。ただ、左打者の欲しいアストロズはふところがちょっと寂しいし、王者レッドソックスも打撃陣の補強は不要だろう。
というわけで、ここへ来て最有力候補に浮上しているのはフィリーズだ。