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キエッリーニが代表100試合到達。
知性と野性を併せ持つ“ドクター”。 

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手嶋真彦

手嶋真彦Masahiko Tejima

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photograph byGetty Images

posted2018/11/23 17:00

キエッリーニが代表100試合到達。知性と野性を併せ持つ“ドクター”。<Number Web> photograph by Getty Images

ブラジルW杯ではスアレスの噛みつき被害にあったキエッリーニだが、それほどまで相手FWを辟易させる存在なのだろう。

知性と野性を併せ持つ。

 プロサッカー選手のキャリアは短く、引退後の人生の方が長い。そうした観点からキエッリーニはメディアを介し、とくに若い選手に警鐘を鳴らす発信役も担ってきた。

 勉強が、もともと好きだったわけではないようだ。

「母さんから、きつく言いつけられていた。もしも学校に行かないのなら、カルチョ(サッカー)にも行ってはいけないと」

 キエッリーニの多面性は、おそらく文武両道を続けてきたから、育まれたものだろう。ピッチの外では「慎み深く」、ピッチの中では「荒々しい」。普段は「思慮深く」、試合では「衝動的」だ。

 取材の相手には、よく喋り、よく笑う。対戦相手には挑発的で、エネルギッシュに追い詰める。日によって、ドットーレ(学者)と呼ばれることも、アニマーレ(野獣)と呼ばれることもある。要するに、知性と野性を併せ持っている。

「勉強が僕を助けてくれた」

 キエッリーニだけが特別なのか。そんなはずはない。人間も動物であり、野性はヒトのDNAに刻まれた本能だ。かといって禽獣(きんじゅう)のようには空を飛べず、時速100kmの速さで走れもしない。身体能力で大きく劣る人間が、未開の頃からの生存競争を逞しく生き残ってこられたのは、知性を発達させてきたからでもあるだろう。

「勉強は人生でもフットボールでも僕を助けてくれた。試合前にも学問と向き合っていたおかげで、試合に臨む直前の緊張から解放されていた」

 キエッリーニが文武両道から享受したのは、そうした利点だけではない。さらには、現役引退後の人生の幅を広げる可能性だけでもない。

【次ページ】 試合中、脳ミソが働かないと。

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ジョルジョ・キエッリーニ

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