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キエッリーニが代表100試合到達。
知性と野性を併せ持つ“ドクター”。 

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手嶋真彦

手嶋真彦Masahiko Tejima

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photograph byGetty Images

posted2018/11/23 17:00

キエッリーニが代表100試合到達。知性と野性を併せ持つ“ドクター”。<Number Web> photograph by Getty Images

ブラジルW杯ではスアレスの噛みつき被害にあったキエッリーニだが、それほどまで相手FWを辟易させる存在なのだろう。

「ドクター」とも呼ばれる。

 遠征中や試合前の時間にも、こつこつ学び続けてきたと振り返る。そもそも運動強度の高いサッカーは長時間続けられない。空き時間はたっぷりあるので、学問との両立は十分可能だとキエッリーニは主張する。

 修士論文のテーマは「ユベントスフットボールクラブのビジネスモデル」について。レアル・マドリーやFCポルトなどヨーロッパの他のトップクラブを比較対象としながら、ユベントスの「ブランドのプロモーションや人的資源のマネジメントがクラブの財政面とスポーツ面にもたらすインパクト」について論述したそうだ。

 キエッリーニが極めて優秀な成績で卒業したトリノ大学は、イタリアでも十指に数えられる名門校。メディアからは「ドットーレ(ドクター)・キエッリーニ」と呼ばれもする。

 意外だという感想を持った読者は、少なくないかもしれない。実際、ピッチ上のキエッリーニは明らかに武闘派であり、粗暴なイメージの方がはるかに強い。

現役引退後のことも考えて。

 インテリらしき雰囲気はまるでない。味方の選手やサポーターにとっては頼もしい勇猛果敢なファイターでも、敵方のティフォージ(熱心なファン)にしてみれば、いかにも荒っぽいハードマーカーでしかない。「憎たらしく思えるタイプだろう」と、キエッリーニ自身にも自覚はあるようだ。時にはメディアから「アニマーレ(アニマル)」とも評されてきた。

 有名なのは2014年W杯の試合中、ウルグアイ代表のルイス・スアレスに噛みつかれたあの一件だ。激しく、ねちっこい守りを容赦なく続けていたキエッリーニだからこそ“凶行”の被害者となった、ある意味では必然の出来事だったとも考えられる。

 文武両道の大きな価値を、キエッリーニはこう説いている。

「現役引退後もサッカーの仕事を見つけられるのは、少数の選手だけだ。場合によっては経済的な問題を抱えるか、精神を病んでしまう恐れもある」

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ジョルジョ・キエッリーニ

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