スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
エディーの挑発が真剣勝負を生んだ。
日本相手に描いたシナリオの凄さ。
posted2018/11/19 11:45
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
AFLO
フィジカリーにスマッシュします。
祈りなさい。お寺に行って、我が身の無事を祈っておきなさい。
情け容赦なく、行きますから。
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いずれも日本対イングランドのテストマッチを前に、イングランドのヘッドコーチ、エディー・ジョーンズ氏が語ったとされる言葉だ。
こうした“挑発”に日本はスマートに対応した。
8万1000人を飲み込んだトゥイッケナム・スタジアムで、日本は前半に学習能力、準備力の高さを披露、15対10とリードした。しかし後半に入ると、イングランドが別人へと変身、後半だけを見ればイングランドが25-0と日本を封殺した。
リスペクトを尊ぶラグビー文化のなかにあり、しかも教え子がたくさんいるジャパンに対して、不必要とも思える挑発をなぜ行なったのか。
“fired-up”してもらわないと。
試合が終わって、ジョーンズ氏の意図が見えてきた。
「ジャパンに“fired-up”してもらわないといけませんでしたから」
意図的にfired-up、日本にメラメラとやる気を起こさせた?
言われてみれば、後付けではなく、たしかにそうした要素があったことは否定できない。
イングランドにしてみれば、オールブラックス相手に1点差の惜敗を喫した翌週、日本が相手では選手たちがモチベーションをアップさせるのは正直、難しい。
そこでジョーンズ氏は日本を挑発するような言葉を繰り出し、タフな試合になるように布石を打った。来年にはワールドカップ日本大会を控え、無駄な試合はひとつとして許されないというのがジョーンズ氏の考え方だからだ。