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エディーの挑発が真剣勝負を生んだ。
日本相手に描いたシナリオの凄さ。
text by

生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2018/11/19 11:45

“挑発”が話題になったが、エディーと日本のメンバーが旧交を温める場面も。
冷静にやり返す山田、リーチ。
もっともジャパンの面々は大人で、敵将の言葉をまともには取らなかった。ジョーンズ氏にガッツリと絞られた山田章仁(金髪にしていた彼は最初の面談で『ムービースターは要りません』と突き放された経験を持つ)も、
「イングランドにお寺はないから」
とユーモアでやり返し、ジョーンズ氏といちばん長い時間を過ごしたであろう主将のリーチ マイケルは、
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「エディーさん、憎めない人ね」
と試合前日の会見で笑っていた。
スルーを装っていたとはいえ、それでもメディアが発言について質問するから、どうやったって選手たちの深層心理の中に「フィジカリー・スマッシュ」は刷り込まれる。
前半の日本は鮮やかだった。
密集、ボールへの素早い働きかけを期待されて代表初先発を務めた西川征克も、サントリーではエディーさんにしごかれた選手のひとり。
「何気なくプレーしてしまうと、『どうして? なぜ?』とよく質問されました」と当時のことを振り返っていたが、試合前々日の取材では、
「スマッシュし返すつもりでいきます」
と覚悟を固めた様子だった。
実際、日本は前半戦にジョーンズ氏の言葉に見事に反応した。
オールブラックス戦で課題となったブレイクダウン周りのクリーンアウトは(ボールに対して絡んでくる相手に対して、2番目、3番目に到着した選手がきれいに排除していく)、西川をはじめとした選手たちがお手本のようなプレーを披露し、それがSH田中史朗の速い球出しにつながった。
特に大外に陣取ったリーチのプレーは効果的で、『サンデータイムズ』では出場した選手のなかで最高評価となる9点を獲得していた(10点満点)。