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薬物事件で開催危機の岩手競馬。
「復興の窓口」を潰してはならない。
text by
井上オークスOaks Inoue
photograph byOaks Inoue
posted2018/11/17 11:00
南部競馬の代名詞的な存在である南部杯。
侵入者の存在を想定して、カメラを設置。
9月に2頭目のボルデノン陽性馬が出た段階で、岩手県競馬組合は再発防止策をこしらえた。そのひとつが、各厩舎への監視カメラ設置だった。競走馬が最も長い時間を過ごすのは、所属厩舎の馬房。何者かが厩舎の馬房に侵入して、禁止薬物を投与している可能性を想定した施策であり、抑止力も期待された。
前述した4頭のボルデノン陽性馬のうち、3頭は高橋純厩舎の所属馬だ。なかでも、ヒナクイックワンの成績と検査結果を並べると、同馬がボルデノンを摂取した時期が浮かび上がってくる。
9月29日 2着(陰性)
10月 6日 1着(陰性)
10月21日 1着(陰性)
10月28日 1着(陽性、事後失格)
すなわち、ヒナクイックワンは10月21日のレース後から28日のレースに出走するまでの間に、ボルデノンを摂取した可能性が高い。監視カメラの記録映像がさっそく役に立つかと思われたのだが……。
真相の究明はいまだ進まず。
岩手県競馬組合によると、高橋厩舎への監視カメラ設置は10月23日で、稼働がスタートしたのは11月6日だった。犯人がいると仮定すると、監視カメラの設置前を狙われたのか。もしくは稼働していないことがバレていたとも考えられる。
岩手県警は、競馬法違反の疑いで一連の事件を捜査している。また、高橋厩舎で使用された寝藁(馬房に敷き詰める藁)などの検査結果はまだ出ていないため、意外なものにボルデノンが混入していて、馬の体内に取り込まれた可能性はゼロではない。
とはいえこうも続くと、何者かが厩舎や岩手競馬を陥れようとしているのではないかという怨恨説や陰謀説まで浮上してきた。実際、岩手競馬はレースを開催できなくなっている。さらに休止が長引くようなら、赤字収支に転落してしまう恐れもある。
しかし岩手競馬には、こんなことで潰れてはならない理由があるのだ。