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薬物事件で開催危機の岩手競馬。
「復興の窓口」を潰してはならない。 

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井上オークス

井上オークスOaks Inoue

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posted2018/11/17 11:00

薬物事件で開催危機の岩手競馬。「復興の窓口」を潰してはならない。<Number Web> photograph by Oaks Inoue

南部競馬の代名詞的な存在である南部杯。

震災復興の象徴のひとつとして。

 2011年3月11日に発生した東日本大震災で、岩手県は甚大な被害を受けた。沿岸部の馬券発売施設は津波に襲われ、水沢競馬場や盛岡競馬場のスタンドも一部損壊。5月中旬まで、レースを開催することができなかった。

 そんな中、国内外の競馬ファンやホースマンから、あたたかい支援が寄せられた。

 たとえば――盛岡競馬場の名物レースである南部杯は、2011年に限ってJRAの東京競馬場で開催された。そして馬券の売上から5億円が岩手県に寄付され、約3億5千万円が岩手県競馬組合に寄付された。

 達増拓也岩手県知事は、11月8日の定例記者会見でこう述べている。

「競馬の全国団体、また、地方団体の連合会、全国の競馬ファンの皆さんからの支援もいただき、復興のひとつの象徴とし、東京で南部杯を行うといったようなことも含めて、岩手全体に何かあった時に岩手を救うための、ひとつの象徴としての役割も果たしたと思います。

 そうやって支援された岩手競馬が災害に対する寄付を行ったり、騎手の皆さんが先頭に立ってチャリティーを行ったりということもあります。そういう多様な、いろんな役割を果たしつつ、岩手競馬というのは岩手県の顔としての役割を果たしているというふうに思います」

照明も新調し、経営は上向き。

 また、岩手県競馬組合は2007年に、単年度収支で赤字を出さないことを条件として、岩手県・盛岡市・奥州市から330億円の融資を受けている。長く厳しい経営が続いたが、近年は馬券のインターネット販売が好調で、昨年は元金の一部返済にこぎつけた。

 さらに今秋は盛岡競馬場に照明設備を新設し、日没後もレースが開催できるようになった。その効果は絶大で、10月8日に行われた南部杯の売上は11億円を優に超え、岩手における南部杯の売上レコードを記録。南部杯を制したルヴァンスレーヴの衝撃的な強さに花を添えた。

【次ページ】 1日も早く再開されることを祈る。

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