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メジャー選抜に大物が皆無でも、
日米野球がアメリカで話題な理由。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2018/11/10 11:00
今回の日米野球、メジャーリーグ選抜で最も有名な野球人はやはり、松井秀喜だろう。
日本のプロ野球は愛されている。
8日に行われた読売ジャイアンツとの一戦の中継中には、ジャイアンツの歴史が語られ、通算868本塁打の記録を持つ王貞治(現福岡ソフトバンク取締役会長)のことに話が及んだ。
「今年は投手と打者の両方で活躍したエンゼルスのショーヘイ・オオタニ(大谷翔平)のことを、『日本のベーブ・ルース』なんて呼んだものですが、オリジナルの『日本のベーブ・ルース』はサダハル・オー。日本のホームラン王なのです」
1974年に後楽園球場で行われたメジャー通算755本塁打のハンク・アーロンとの「ホームラン競争」の映像が流れたかと思えば、両者の通算成績が今風にOPS=出塁率+長打率まで表示され、MLBネットワークが最大限のリスペクトを払っていた。
そういう敬意の表し方は、たとえば阿部慎之助にも払われていて、ベンチで試合を見守る前出のモリーナ捕手の映像を重ねながら「長年にわたって、ジャイアンツを支えてきた選手です」と紹介してくれるから、見ているこちらが感謝したくなるぐらいだった。
MLBネットワークの中継の仕方やコメンテイターの話には、とても「野球人らしさ」が感じられた。野球は野球。レベルの違いなんて関係ない。ある種の愛情を持ちつつ、メジャーリーグはこの秋、日本のプロ野球に注目している。
そのことを日本プロ野球の選手たちが感じてくれればいい、と心から思う。
日本の実力を認知させるチャンス。
野茂英雄のメジャーデビューから20年以上経った今でも、メジャーリーグ球団にとっての日本プロ野球は未知なるものだ。YouTubeなどでも日本の選手のプレーを見ることは出来るが、彼らが現役のメジャーリーガーと対戦している姿を見ることが出来る機会はそう多くない。
前回の「日米野球(2014年)」では前田健太(現ドジャース)や牧田和久(現パドレス傘下マイナー)、大谷翔平(現エンゼルス)といった投手たちが、メジャー関係者の熱視線を浴び、アメリカに住んでいるファンに注目された。
前回の中継時には山田哲人(東京ヤクルト)が「Five Tools(率を残せる打撃と長打力、スピードと強肩、守備を兼ね備えている)Player」と紹介され、柳田悠岐(福岡ソフトバンク)が「ほかの日本人とは違うスイングをする選手」として紹介されていた。
もしかしたら、今回は強肩「甲斐キャノン」で日本シリーズ最優秀選手賞に輝いた甲斐拓也捕手(福岡ソフトバンク)や、史上最年少で「3割30本塁打100打点」を達成した岡本和真内野手(巨人)らが、アメリカのテレビ中継で注目され、認知されるかも知れない。
日本プロ野球の実力をアメリカ、そして世界に知らしめるチャンスは、「日米野球」に出場する選手全員に等しく、与えられている。