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パワハラ問題直後の世界体操で、
村上茉愛と団体女子に見た希望。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAFLO
posted2018/11/12 08:00
女子個人総合で日本女子史上初の銀メダルに輝いた村上茉愛。演技後は応援に来た母のもとへと駆け寄った。
田中監督の大胆な采配。
予選では経験豊富な村上、寺本を軸に、初出場の高校生コンビ、畠田瞳(18=セントラル目黒)と梶田凪(18=山梨ジュニア)が伸び伸びと演技をした。高校生2人は日本の弱点である段違い平行棒が得意。畠田は13.800点で日本勢4人の中で最高点。梶田も13.550点と無難にまとめた。
個人総合予選でも畠田は52.932点で全体の16番目。予選3位に村上、同14位に寺本が入ったため1カ国2枠の個人総合決勝(24人)に進むことはできなかったが、初出場としては堂々たる成績だった。
予選から3日後に行なわれた団体総合決勝では、田中監督の大胆な采配が注目を浴びた。女子の団体決勝は、5人のメンバーから各種目ごとに3人が出場し、その合計点で争われるのだが、日本は村上、寺本、畠田の3人が全4種目を任されるという異例のオーダーとなった。
ミスも含めてすべてが点数に反映される、極めて高いプレッシャーの中での試合。日本は落下のリスクの大きい平均台からのスタートをうまく乗り切ると、続くゆかでもきっちりと実力を示した。
キャプテンに背負わせすぎた。
3種目めの跳馬で、日本女子最高難度Dスコア5.8点の大技「チュソビチナ」を跳んだ寺本が、台への着手で失敗し、本来の点数より大幅に低い12.700点となり、最後の平行棒でもミスがあったのは痛かったが、それでも出場した3人が最後までしっかりと闘い抜いたのは間違いない。
田中代行監督は「寺本選手はミスが出たが、いろいろなことがあった中でキャプテンが背負いすぎたところがあって、それがミスにつながったのかもしれない。キャプテンがチームをよくまとめてくれていたが、強化体制としてもっと早く気づいてあげられればという思いがある」と悔やんだ。他の選手は普段から指導するコーチが遠征の最初から同行していたが、寺本コーチは合流が後だった。
日本は、団体総合で4位だったリオ五輪で3位の中国との差は1.632点だった。今回は6位で、3位の中国との差は2.134点。一見、広がったように見えるが、リオ五輪の結果はほぼノーミスで、力を出し切っての結果でもあり、今回とはやや違う。