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パワハラ問題直後の世界体操で、
村上茉愛と団体女子に見た希望。
posted2018/11/12 08:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
AFLO
11月3日に閉幕した世界体操選手権(カタール・ドーハ)。日本女子は、村上茉愛(22歳=日体大)が個人総合で日本女子史上最高成績となる銀メダルに輝き、種目別ゆかでは2大会連続で表彰台に上がる大活躍を見せた。光る個性と高い実力が世界に認められ、日本女子のエースとしての地位を確立した。
村上は「個人としては、自分らしくミスのない演技ができた」と2つのメダルに満足感を見せていた。しかし、一方で「個人のうれしさよりも、東京五輪に向けて一番大事な団体戦でメダルを取れなかった悔しさの方が大きかった」と、目標を達成し切れたわけではないことも強調している。
今大会は、団体決勝で3位以内に入れば東京五輪の団体出場権が与えられることになっていたが、日本は6位に終わっていたからだ。
村上は「目標は団体、個人総合、種目別のメダルで、そのうち種目別と個人総合では取れた。次は団体を狙いたい」と強い気持ちを示している。果たして、2年後の東京五輪でその夢を叶えることはできるだろうか。
大会前に迎えた非常事態。
大会前、日本女子は非常事態に見舞われていた。パワハラ問題により、塚原千恵子女子強化本部長が第三者委員会の調査結果が出るまで(11月末予定)の間、職務停止となり、代わりに今年8月のアジア大会で女子を率いた田中光氏が、代行監督としてドーハに向かった。
また、戦力的には、代表候補だった宮川紗江(19歳=高須クリニック)が9月に辞退したうえに、現地入りしてから杉原愛子(19歳=朝日生命)が腰痛を悪化させ、欠場を余儀なくされた。
代表候補が6人いたところから、最終的に臨戦態勢に入れたのは4人。しかも主軸である村上も、7月末に右足首靱帯を部分断裂して全治3カ月と診断され、ギリギリの仕上げだった。
しかし、この厳しい状況で、18歳から22歳のメンバーたちはよく耐えた。世界選手権と五輪に8大会連続出場中のキャプテン寺本明日香(22=ミキハウス)を中心に、本番の舞台に立った4人の選手たちは、自分たちのやるべきことに全力でフォーカスした。