月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
根尾昂にトーチュウが狂喜乱舞し、
金本監督辞任にデイリーは激怒した。
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/11/01 07:00
中日がくじ引きを制して交渉権を手にした根尾昂は、すでにしてただの選手以上の存在だ。
岩瀬、荒木引退発表の日に。
それは『龍の背に乗って』(渋谷真)という記者コラムである(東京中日スポーツ9月27日)。
この日の紙面は広島カープの3連覇が伝えられていた。これだけでもトーチュウにはつらい日だ。しかしドラゴンズにとってさらに大きな知らせがあった。
その1面は「黄金期支えたレジェンド 岩瀬、荒木も引退 浅尾に続き…」。
ファンにとっては寂しさしかない。
そう、そんな日の『龍の背に乗って』である。特別編と銘打たれていた。タイトルは「5年後に現れたドラフトの勝利」。
まずセ・リーグの5年スパンの勝敗を比較したあと次のように続く。
「なぜ5年スパンの勝敗を比較したか。それはドラフトの成果は5年後に表れるからだ。広島の黄金期はドラフトの勝利だ。西武や日本ハムもしかり。ソフトバンクだって軸はドラフトにある。FA補強で勝てるのなら、巨人が広島の後塵を拝するはずがない。ドラフトで勝つ肝は無難より果敢にある。相手の4番をねじ伏せるエース、敵のエースを打ち砕く4番。」
自問自答するような文章。そしてここからだ。
「即戦力という甘い響きに飛び付いたはいいが『50点』の選手を並べても勝てないことがよくわかった。『0点』を恐れず挑めば数年に一人は『100点』の逸材が入ってくる。FAで抜けようが、次の『100点』がいれば怖くない。」
何か毅然とした雰囲気が伝わってくる。
重すぎるコラムの締め。
コラムの締めは、
「この秋のドラフトに、竜の5年後が懸かっている。」
お、重い……。重すぎる。
正直悲壮感すら感じたが、一方で今こそ変わるときだという強い決意も感じた。
「0点」を恐れず挑めば数年に一人は「100点」の逸材が入ってくる。FAで抜けようが、次の「100点」がいれば怖くない……
一般紙で言えば「社説」のような意思の表明だろうか。多くの中日関係者もこのコラムを読んだはずである。
この文章を見て私は、「もしかしたら根尾は中日が引くかも……」と感じた。いや、私だけじゃないだろう。
するとホントに中日が当たりくじを引いた。これを読んでおいてよかった、保存しておいてよかった。それが今年のドラフト会議の感想である。
あ、もう一つ言っておくと「甲子園は日本ハムのためにあるのか!!」(植草貞夫風)です。