マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
根尾昂が捕手になるのは本当にナシ?
ぜひ一度試してほしい数多くの理由。
posted2018/11/02 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
ドラフトが終わって、日本シリーズだ。
その先は、いわゆる「ストーブリーグ」になって、今年の野球の季節も終幕に近づく。
今年のドラフトは興味深かった。
根尾昂(大阪桐蔭)の4球団指名はわかるが、千葉ロッテの単独と思われた藤原恭大(大阪桐蔭)に楽天と阪神も手を挙げ、多くてもオリックスと広島の2つだろうと踏んでいた小園海斗(報徳学園)には、間際になってソフトバンクとDeNAが“参戦”してきたから、もっと驚いた。
センターラインの世代交代。
そんなテーマを抱えたチームが、たまたま重なったのだろう。来年の「2019ドラフト」に根尾、小園クラスの遊撃手が見当たらないのも、指名が重なった理由かもしれない。
今年のドラフトは「根尾昂」のためのドラフトだった。正直、そんな印象も強かった。
「根尾は捕手だ」とずっと言ってきた。
「根尾は“捕手”でしょう!」
この秋口あたりから、ラジオでも、テレビでも、人の集まりでも、ずっと言い続けてきたし、文章にもしてきた。
そのたび“現場”はドッと沸くのだが、そのあとすぐに笑い声があがる。
冗談だと思うらしい。私は、そういう類いの話で決して冗談を言うことはない。私なりの根拠を持って、大まじめに話してきたのである。
だいぶ有名になった話だが、中学時代の根尾昂は、スキースラローム(回転)で世界大会に出場するほどのトッププレーヤーだった。
おそらくその時に養われたものなのであろう。
下半身……具体的にいうと股関節、ヒザ、足首、もっと言えば足の指の関節まで、実に強靭に、かつ柔軟に“連動”できる。
そのメカニズムを活用して、マウンドに上がればスムースな体重移動で腕を振り、外野はもちろんのこと、難しい「ショート」のポジションまで、半年かからずにこなしてしまった。
ショートを守って、三遊間から粘っこい下半身の連動と踏ん張りで矢のような一塁送球を見せつけられる時、「こいつ、キャッチャーだろう……」と、いつもため息まじりにつぶやいてしまう。
彼ほど、下半身の粘りと細かなフットワークを生かして、機敏で高精度なロングスローができる高校生はそうはいない。