“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
完全アウェイも「逆に楽しい」。
“久保世代”U-19は冷静に勝てる。
posted2018/10/30 17:30
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Masahiro Ura
たぶん、今まで経験したことがないほどの大アウェイだっただろう。AFC U-19選手権準々決勝・インドネシア戦が行われたゲロラ・ブン・カルノスタジアムは、実に6万人のインドネシアサポーターで埋め尽くされた。
この試合で勝った方が来年ポーランドで開催されるU-20W杯出場権を獲得し、負けたチームはそこで活動が終わる。インドネシアにとってU-20W杯出場は実に40年ぶりの悲願。その歴史的瞬間の目撃者になろうと、インドネシアサポーターが大挙して押し掛けたのだ。
耳をつんざくような大歓声、そして360度取り囲んだインドネシアのカラーである真っ赤なスタンド。日本にとってはとんでもないほどのアウェイだった。国歌斉唱では日本のアナウンスがされるとブーイングが起こり、逆にインドネシア国歌は6万人が大合唱。
平常心でプレーするのは難しい環境にあったが、日本の選手達は非常に冷静だった。
「盛り上がってくれた方が」
「最初は『みんなスピーカーでも持っているんじゃないか?』と思うくらいだった。日本の応援とは違って、(スタジアムに居る)みんなの声がでかいという印象で、どこがゴール裏か分からない感じでした。でも、逆にこっちの方が楽しいですよね。ワーッと盛り上がってくれた方が」
こう語ったのはFW久保建英だ。この感覚は久保だけではなく、他の選手も同じだった。
「ACLのアウェイはこんな感じの大観衆なんで、僕自身は慣れてる」とMF安部裕葵が語れば、「浦和レッズや、僕が所属する名古屋グランパスもあれくらいのサポーターが居るので、逆に力になりましたね。インドのU-17W杯でもそういう状況はあったので、『何か言っているな』程度で考えていました」と右サイドバックの菅原由勢も語ったように、まったく意に介さないどころか、むしろポジティブに捉えていた。
立ち上がりから冷静だった。開始早々、安部のドリブルシュートをDFにブロックされ、そこからカウンターを受けるが、センターバックの橋岡大樹が素早く身体を寄せて防いだ。
インドネシアは5バックを敷き、その前にダブルボランチを置いた。スペースを与えない守備から、前線に残した3枚のFWでカウンターという明確な戦い方だった。日本の選手はそれを見抜き、攻め込んでいてもカウンターを警戒していた。橋岡のブロックはその約束事がしっかりと表現されていた。