“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
完全アウェイも「逆に楽しい」。
“久保世代”U-19は冷静に勝てる。
text by

安藤隆人Takahito Ando
photograph byMasahiro Ura
posted2018/10/30 17:30

伊藤洋輝(7番)と連動する久保建英。彼らはすでに大アウェイでも臆さないメンタルを持っている。
先制点は東のスーパーゴール。
13分に右サイドハーフの藤本寛也が負傷し、自ら交代を訴えるアクシデントが発生し、MF斉藤光毅が投入されたが、彼もスムーズに試合に入った。投入直後の16分、右サイドでボールを受けた斉藤が菅原へパス。菅原のクロスに中央で安部がダイビングヘッドで合わすなどリズムを作ると、40分に先制に成功する。
MF伊藤洋輝のパスを受けた左サイドバックの東俊希が、遠目の位置ながらフリーになる。するとGKの位置をよく見て、迷わず左足一閃。弾丸ライナーでそのままゴール右上隅に突き刺さった。
「フリーになると分かっていたので、ボールを受けたら打とうと思っていた。それが上手く入って、正直びっくりしました」
ADVERTISEMENT
本人も驚くほどのスーパーショットが決まると、彼らの冷静さはさらに研ぎ澄まされた。安部はハーフタイムでの出来事をこう明かす。
「我慢勝負になる。1-0で折り返しているからこそ、隙があれば得点を狙うというイメージで、後は我慢して、集中して、最悪1-0で終わらせても良い。チャンスがあれば追加点と考えればいい。みんなでこう共有しました」
スコールが発生しても冷静に。
ハーフタイムに東南アジア特有のスコールが発生し、後半が始まってしばらくすると雨脚はさらに強まり、ピッチを取り囲む陸上トラックには水たまりができるほど激しくなった。
視界もままならないような環境だったが、イメージの共有ができているチームは、崩れることはなかった。
59分に右中央から日本の最終ライン裏へ浮き球のスルーパスを送られたが、橋岡が身を翻して右足を伸ばしてクリア。その2分後には左サイドからゴール前にマイナスの折り返されたが、これも伊藤が全速力で戻って対応した。
64分には安部に代えてFW田川亨介を投入。左サイドハーフに斉藤を移し、FWの久保が右サイドハーフ、田川と宮代大聖のツートップに切り替えた。
「田川が入ってからは、田川の裏をシンプルに使えるようになりましたし、そこで時間ができるのが分かった」と主将のMF齊藤未月が語ったように、すぐに2トップの特性を理解して、攻撃のアプローチを変える柔軟性を見せた。
68分に絶好の位置でFKを与えた際は、サディル・ラムダニの放ったキックをGK谷晃生が鮮やかなパンチングで防ぐ。セーブ直後、谷が雄叫びを挙げてガッツポーズすると、周りの選手もそれに呼応するように吠え、集中力をさらに高めた。