プロ野球亭日乗BACK NUMBER
ジョンソンの103球を導いた石原慶幸。
カープに先勝をもたらした布石とは。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/10/29 18:00
今シーズン、石原慶幸の打率は2割に届かなかった。それでも使われるのは確かな武器を持っているからだ。
勝負を分けた柳田の第2打席。
第2戦の勝負の分岐点は、4回のソフトバンクの攻撃だった。
初回に鈴木誠也外野手の内野安打で先制した広島が、3回にも丸佳浩外野手の犠飛と松山竜平外野手のタイムリー安打で2点を追加して3点をリードした直後のことだ。
この回先頭の川島が四球で出塁すると、2番・今宮健太内野手の中前安打と失策で一、三塁のチャンスを作った。グラシアルが倒れた1死後に打席に入ったのが4番の柳田悠岐外野手だ。
ここで多くの評論家が指摘したように、ジョンソンと石原のバッテリーが徹底した内角攻めで、相手の主砲を抑え込んだ。
初球が146キロのツーシームを見逃し。2球目が144キロのツーシームを空振りで3球目を高めに外した1ボール2ストライクからフィニッシュは膝下に動く142キロのツーシームで空振り三振だった。
柳田には前日の第1戦でも先発した大瀬良大地投手が、徹底した内角攻めで封じ込んだ実績がある。
2つの布石が柳田を縛っていた。
「イシ(石原)が感じたサインを信じて、失投しないようにと投げた」
ジョンソンが振り返ったが、実はこの内角攻めにはもう1つ、石原が巧妙に打っていた布石があったのである。
「(柳田は)いいバッターなので、単純にインサイドだけでも抑えられない。やっぱり前後の兼ね合いがあるし、何よりいいところに投げてくれたということだと思います」
試合後の石原が語るように、この打席のインサイド攻めを有効にしたのは、1つは前日の大瀬良が残したインサイドへの残像がある。そしてもう1つが、この日の2回の先頭打者で回ってきた第1打席の配球だったのである。
前日の攻めから当然のように、この打席の柳田の頭には内角が強く刻まれていたはずだった。ところが走者もいない、比較的攻めやすい状況で石原は初球のインサイド寄りのカットボールをファウルされると、そこから逆に外角を中心にした攻めに転じているのである。
2球目は122キロのカーブが外角低めに外れて、3球目は外に構えたツーシームが真ん中低めに外れるボール。4球目も外のカットボールを要求して、これがボールとなったが、最後も外角の138キロのカットボールで左飛に打ちとっているのだ。
要は前日のインコースの残像を使いながら、比較的余裕のある場面であえて外を中心の組み立てをして布石を打っていた。