プロ野球亭日乗BACK NUMBER
ジョンソンの103球を導いた石原慶幸。
カープに先勝をもたらした布石とは。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/10/29 18:00
今シーズン、石原慶幸の打率は2割に届かなかった。それでも使われるのは確かな武器を持っているからだ。
柳田もお手上げの完璧なピッチング。
そうして走者を置いた大事な場面で再び、一転して内角を強気に攻めて、相手の主砲を抑え込んだのである。
「あそこに全部投げられるのが一流」
抑え込まれた柳田自身が、こう白旗を上げるしかない完璧なピッチング。
「全部の球種でストライクが取れるし、全部の球種が決め球になる」
ジョンソンの投手としての特性を問われた石原の答えだったが、そうしたコントロールの良さを使いながら、石原が絶妙に作り上げた柳田封じのシナリオだったわけである。
2016年のクライマックスシリーズから、これでジョンソンはポストシーズンでは6試合で4勝1敗で41回3分の2を投げて4失点。防御率は実に0.86という驚異的な数字を残している。
そしてその全てでマスクをかぶっていたのが、石原なのである。
「このサインが欲しいと思うとそれが出る」
「来日してから4年間、ずっとコンビを組んでくれていい時も、悪い時も一緒に過ごしてくれている。イシがサインを出すときに、このサインが欲しいと思うとそれが出る」
痺れるような日本シリーズの舞台。それでもいつもと変わらずに、相手打者を淡々と抑え込んでいける背景には、女房役へのこの絶大な信頼があるからだ。
「短期決戦で気持ちが揺らいでいるようじゃ、いい投手じゃない」
広島に先勝をもたらしたジョンソンの103球。それは考え抜かれたシナリオ通りに演じた、鷹封じのピッチングだった。