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大リーグ連覇はなぜ至難の業なのか。
アストロズが見せた脆さの本質。
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph byGetty Images
posted2018/10/28 17:00
バーランダーや、昨季MVPのアルトゥーべ(中央)を擁したが、連覇の夢はレッドソックスに阻まれた。
バーランダーが口にしたこと。
ワールドシリーズを目前で逃した後、バーランダーは言った。
「(チーム全体に)多くのケガが影響した。いい戦いをしたが、十分ではなかった」と振り返り、さらに続けた。
「プレーオフは、コイントスのようなもの。この時期に、いかにベストの野球をできるか」
裏か表か。一か八か。勝つか負けるか。
おそらくバーランダーは、勝負事には「運」が付きもの、とでも言いたかったのだろうが、果たしてそうだろうか。
ヤクルトなどで監督を務めた野村克也氏は、かつて「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉を頻繁に使っていたが、今回のアストロズにしても、敗因はひとつやふたつではないだろう。
相手に手の内を読まれた。
主軸のアルトゥーベが右膝を痛めるなど、チーム状態が万全でなかったのは間違いない。
その一方で、昨季ベンチコーチを務めたアレックス・コーラ監督率いるレッドソックスに、手の内を読まれたかのように敗れたのも、決して偶然ではないだろう。アストロズのデータ運用、戦術、戦略を熟知した敵将にすれば、してやったり、だったのではないだろうか。
極端な守備のシフトや、データ偏重の野球は、逆手に取られれば、命取りになりかねない。
長丁場の公式戦はともかく、セイバーメトリクスなどをフルに活用したデータ野球で勝ち進んできたアストロズの「脆さ」が、短期決戦で浮き彫りになったのは、コイントスのような運や気まぐれでもなければ、おそらく、気のせいでもない。