プロ野球亭日乗BACK NUMBER
世代交代のホークス、円熟のカープ。
日本Sはベンチワークの暗闘に注目。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2018/10/26 16:30
監督就任以来、リーグ1位→2位→1位→2位で日本一2回の工藤公康監督と、4位→1位→1位→1位の緒方孝市監督。
送りバントの否定という話ではない。
繰り返しになるが、送りバントを否定するわけではない。
点差や状況、相手投手と味方の打順の巡り合わせなど、監督は様々な要素を総合的に判断して作戦を決断する。その中に「送りバント」という決断はもちろんある。ただ、短期決戦の指揮官は、ともすると安全策を選択しがちで、そこで送りバントは最も多用される作戦になる。
しかし広島の野球とはもっと奔放なはずなのだ。
巨人とのファイナルステージ初戦の1回に菊池が決めたエンドランこそ、まさに広島の強さを示すものだった。
なにより広島には監督の思い切ったタクトを実行できる選手が揃っている。そのことが広島の強さであり、だから広島の野球は幅が広くなくてはならないのである。
緒方監督も経験を積んで成長した。
過去2回の短期決戦では、勝負を意識するあまりに普段通りの野球ができなくなってしまっていた。それが敗れた緒方監督に向けられた声だった。ただ、指揮官もまた経験を積んで、1歩ずつ前進しているはずである。
3連覇で円熟期に入ったチームを監督がどう動かして日本一へと導くのか。
それとも昨年の日本一を頂点に世代交代の静かな波が訪れているチームを、工藤監督がどう切り盛りして連覇への道を切り開くのか。
そこに大きな勝負の分かれ目があるはずだ。
グラウンドの上のしのぎを削るような選手の戦いも見ものだが、その陰で繰り広げられる監督の暗闘もまた、日本シリーズの醍醐味である。