プロ野球亭日乗BACK NUMBER
世代交代のホークス、円熟のカープ。
日本Sはベンチワークの暗闘に注目。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2018/10/26 16:30
監督就任以来、リーグ1位→2位→1位→2位で日本一2回の工藤公康監督と、4位→1位→1位→1位の緒方孝市監督。
日本Sでも積極采配ができるか?
一方の広島・緒方監督も、CSでは初戦の1回に、田中広輔内野手が出塁するとすかさず2番の菊池涼介内野手とエンドランを仕掛けている。そして、次の3番・丸佳浩外野手のセカンドゴロの間に先制をしているのだ。
第2戦では、1点を追う8回に2死から代打の松山竜平外野手が歩くと、盗塁で代打新井貴浩内野手の適時二塁打を引き出している。
緒方監督はシーズン同様に機動力を駆使した積極采配で、チームをシリーズの舞台へと引き上げてきたのである。
しかし、である。
日本シリーズでは、果たしてどれだけ同じように失敗を恐れずタクトが振るえるだろうか……そこが短期決戦の怖さかもしれない。
特に緒方監督は一昨年、日本ハムに2勝4敗で敗れたシリーズで、その消極采配が敗因の1つとして指摘された苦い経験がある。
このシリーズで広島は5戦までに13回、先頭打者が出塁するケースがあった。そのうち第3戦の無死三塁を除く12度のケースで、送りバントのサインが7度出て4回成功させている。
日本ハムに敗れた第5戦の後のコメント。
もちろん送りバントが悪い訳ではない。ただシーズン中の赤ヘル野球といえば、積極的にエンドランや盗塁など機動力を使って攻め込む野球なのは、当時もいまも同じなのだ。
「もう少し機動力を使った野球をやりたかったが、短期決戦は1点、1点かなと思った」
第5戦が終わった緒方監督の言葉だ。
第6戦では5番の松山が3度も先頭で出塁し、当時は6番を打っていた鈴木誠也外野手に打たせることで結果的に2度のチャンスを作って3点を奪っているが、時すでに遅しだった。
しかも昨年のDeNAとのCSファイナルステージでも5試合中4試合で1回に先頭打者が出塁したが、すべて送りバントを選択している。
強打を誇るDeNA打線を相手に、それでも頑なに1点を取りに行く野球に固執したのだ。
相手のアレックス・ラミレス監督が第1戦の1回に失敗はしたが積極的にエンドランを仕掛けるなど動いて試合を支配しようとしたのとは、まさに対照的だった。