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広島カープ、34年ぶりの日本一へ。
原動力は「歩く力」と「厚き矛」。 

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小西斗真

小西斗真Toma Konishi

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photograph byKyodo News

posted2018/10/25 11:00

広島カープ、34年ぶりの日本一へ。原動力は「歩く力」と「厚き矛」。<Number Web> photograph by Kyodo News

カープは一昨年日本ハムに2勝4敗で敗れ、昨年はCSファイナルでDeNAに敗れた。2年分の悔しさを晴らせるか。

広島は必ず誰かが出てくる。

 とはいえ、前田健太が大リーグ挑戦の翌年に勝ち取ったV1、黒田博樹が現役を引退した翌年のV2に続き、V3の道も平坦どころか苦難に満ちていた。

 春先には前年MVPの丸佳浩が故障。4番の鈴木誠也も先発を外れる試合が多かった。背筋を痛めた野村祐輔が2カ月もマウンドから遠ざかり、2年前の沢村賞投手、クリス・ジョンソンは夫人の出産のために一時帰国した。どこのチームにもあり得ることといえばそれまでだが、広島が強いのは必ず「誰かが出てくる」という点だ。

 投手でいえばヘロニモ・フランスア。2年前は練習生扱いで、四国アイランドリーグ・高知に派遣されていた左腕は、この3月にようやく育成選手として契約。5月に支配下選手登録を勝ち取った。わずか年俸8万ドルのドミニカンが8月には月間MVPに選出される。47試合に登板し、3勝4敗1セーブ、19ホールド(防御率1.66)という活躍がなければ、果たして3連覇にこぎ着けられただろうか。

 さらに高卒2年目のアドゥワ誠の成長はブルペンを大いに活気づけた。53試合を投げ、6勝2敗、防御率3.74は苦しい中盤を支えるに十分な働きだった。

野間・西川の台頭で厚み。

 野手ではなんといっても野間峻祥だ。4年目のドラフト1位は、先の丸の故障によってできた穴を埋め、復帰後も左翼のポジションを確保した。

 126試合に出場し、116安打を放ち、17盗塁を成功させた。外野が野間なら内野では3年目の西川龍馬が台頭した。「天才」と評される打撃が一気に開花。107試合、101安打はいずれもキャリアハイである。

 この層の厚みこそがセ・リーグでは巨人以外成し遂げていなかった3連覇をもたらした。Bクラスが当たり前だった頃の広島もそうだっただろうが「誤算」というのは敗者が都合よく使う言い訳だ。勝ってしまえば強さの象徴となる。故障、不振、FA流出。不運ではなくプロ野球にはつきものだ。チームのピンチは割って入る者にとっては最大のチャンスとなる。

【次ページ】 ホークスの打力は要警戒だが。

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