話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
J1昇格争いに大宮は生き残れるか。
カウンターの“型”がその分水嶺。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/10/24 10:00
大前元紀の個人能力はJ2屈指だ。大宮には彼らを存分に生かしたカウンターを仕掛ける意図が欲しい。
先制後の試合運びに課題が。
先手を取ったのは、大宮だった。
後半7分、セットプレーから河本がヘディングで決めた。
「直接狙おうと思っていたんですけど、イバ選手が警戒してGKの前に入ったんで、河本さんと目を合わせて、そこを狙うよって合図したつもりで出しました」(大前)
先制点を奪いつつ無失点で前半を終える。そのアドバンテージを生かして優位に試合を進めるプラン自体はできていた。
しかし、問題はここからの試合運びだった。
横浜FCは点を取りに前掛かりになってきた。そうなると大宮としてはカウンターを狙いやすくなる。実際、そういうシーンが何度も生まれた。
「1-0になってカウンターというシーンが何度かあったし、チャンスもけっこうあって、決め切れればラクになったんですけど……」
大前はそう言うが、それにはもちろん原因があった。
カウンター時の“型”が明確ではなかったのだ。とりわけマテウスは周囲とかみ合わず、カウンターチャンスを活かせなかった。
効果的なカウンターが出ない。
例えばロシアW杯、日本vs.ベルギーの後半終了間際、ベルギーが見せた流れるようなカウンターを思い出せばわかる。即興の思いつきではなく、パターン化されているのだ。
ゴールに結びつかないカウンターについて、大前はこのように話していた。
「マテ(マテウス)がもう少し周囲を見れば、チームとしてもう少しチャンスにすることができたかなと思います」
大宮はセットプレーで守備に入る時、基本的にマテウスが前線で待つ。
それはほぼ毎回決まっているので、彼を軸にカウンターのパターンをいくつか決めておけば少なくともフィニッシュまで持っていけるはずだ。横浜FC戦のように効果的ではないカウンターでは決定機に持ち込み切れない。
追加点を奪えれば優位に試合を展開できたが、逆に後半31分に北爪健吾のスーパーゴールで同点に追いつかれ、1-1に終わった。この時期のドローは勝点1を得たというより、失った勝点2の大きさに目が向いてしまう。