球体とリズムBACK NUMBER
ルヴァン決勝は湘南vs.マリノス。
ゴール量産、独自路線を見逃すな。
posted2018/10/25 12:00
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
J.LEAGUE
ハートは熱く、頭はクールに。
自身初の国内メジャータイトルをかけた一戦を前にして、湘南ベルマーレの曹貴裁監督はそんな状態にある。良いフットボーラーの前提とも言えるコンディションだが、このクラブに関わる人なら、必要以上に興奮や高揚、あるいは緊張を感じていたとしても不思議ではない。
なにしろ、監督だけでなくほとんどの選手、そしてクラブにとっても初めてのJリーグカップ決勝なのだ。ベルマーレ史上唯一の国内主要タイトルは、1994年の天皇杯(決勝は1995年元日)。フジタサッカークラブからベルマーレ平塚に名称を変え、Jリーグに参戦したばかりの頃だった。10代の中田英寿が入団する少し前のことだ。
さらに遡れば、フジタ時代の1970~80年代に3度のリーグ優勝と2度の天皇杯制覇を成し遂げているが、湘南ベルマーレとしては無冠(J2は2度制しているけれども)。つまり、古豪復活の絶好の契機を迎えている。ルヴァンカップ決勝進出が決まってから、クラブ周辺は一気に騒がしくなった、とチーム関係者は言う。
注目されるのを楽しんでほしい。
「気持ちは昂ぶっているかもしれないけど、いたって冷静です」と曹監督は自己分析する。
「準決勝の柏戦の前に、絶対に決勝に行こうと選手たちに言った。その時のほうが高揚していたけど、今は不思議と落ち着いている。だからといって、達成感を持っているわけではないけど」
ただし、選手たちにも同じマインドセットを求めているわけではない。
「記者さんたちも増えるから、自分を見失うなと言っても……。それを受け止めた上でやった方がいいような気もする。これだけ注目されるなかで試合をするのは、選手冥利に尽きるだろうから、それを楽しんでほしいと思っています」