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メルテザッカーの引退試合に思う
ドイツ代表の苦戦と問題の根本。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byUniphoto press
posted2018/10/21 08:00
ドイツ代表、アーセナルなどで活躍したメルテザッカー。彼の引退はドイツの一時代の終わりを象徴する。
代表周辺の憶測、主導権争い。
世間は当然、ヨアヒム・レーブ監督以下ドイツ代表の面々に批判の声を浴びせました。その間にはエジル(アーセナル)の代表引退表明などのトピックもあり、何だかカオスな状況に……。ただ、それでもドイツサッカー連盟(DFB)はレーブ監督の続投を明言し、今年新たに創設されたUEFAネーションズリーグでの復調に期待したのです。
問題が根深いのは、DFB側にも負い目があるからです。DFBはこれまでのレーブ監督の功績を高く評価していて、ロシアワールドカップ開幕前に指揮官との契約を2022年まで延長しました。
大会前に契約延長を認めたのですから、それだけ信頼が厚かったのでしょう。しかし、それは少なくとも2022年のカタールワールドカップまではドイツ代表の体制が変わらないことが明言されたようなものです。
そうなればドイツ代表を取り巻くコミュニティには様々な感情や憶測、そしてそれぞれの立場を明確にするための主導権争いが勃発します。
新陳代謝が進んでいない。
レーブ監督率いるドイツ代表は2006年のチーム結成時から着々と強化して、2014年のブラジルワールドカップ制覇でついにその実を結びます。ただ、ここからのドイツは世代交代が進まず、主力選手の固定化が顕著になります。
今回のUEFAネーションズリーグのメンバーリストの中で、ブラジルワールドカップの優勝メンバーはGKノイアー(バイエルン)、DFフンメルス(バイエルン)、DFボアテンク(バイエルン)、MFドラクスラー(パリSG)、クロース(レアル・マドリー)、ミュラー(バイエルン)の計6人。
数自体は多くありませんが、先のオランダ戦ではドラクスラー以外の5人が先発し、途中出場のドラクスラーも2失点に関与してしまいました。つまり現在のドイツ代表は未だに4年前の優勝メンバーが主軸として君臨しているわけで、新陳代謝が進んでいないのです。
ヨーロッパのサッカーシーンは日々進化しており、それに比例してプロサッカー選手のステータスも高まっています。ゆえに華やかな舞台に憧れる者が増加し、コミュニティは多額のお金を発生させる“装置”にもなったわけですが、その陰では多大なプレッシャーと身分の確保のためにもがき、抗う者たちがいます。